第95話『予選@』
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「……着いた」
仲間の元を離れ、山の中を歩くこと約30分。ようやく晴登はレース会場へと辿り着く。
そこには、木々の合間を縫った道路3本分くらいの広い道があり、スタートを示す垂れ幕が堂々と架けられていた。
「えっと、とりあえず人が集まってる所に……」
会場には着いたものの、どこに集合すればいいかがわからなかったので、とにかく他のチームの人の近くに行く。
ひとまず、初めに目についた、あの黒いフードを羽織った人について行くことにしよう。
そう考えて、ついて行こうとした瞬間だった。
「──何か用か?」
まだ距離は離れていたはずなのに、突然向こうから声をかけられてしまう。しかも振り向くことなくだ。まるで、背中に目が付いているようである。
「え、あ、いえ! ただ、どこに集合するのかなって……」
話しかけられるとは思わず、しどろもどろになりながら晴登は言葉を返す。すると目の前の男は、ゆっくりと振り返った。
フードの下の正体は、ボサボサの黒髪を目にかかるくらいに伸ばし、その隙間から鋭い三白眼を覗かせる、猫背の青年だった。しかも黒いフードも相まって、とても暗い雰囲気を醸し出している。
そんな彼は、晴登の言葉に返答するよりも先に、驚いた表情をした。
「お前、【日城中魔術部】の……」
「え、どうしてそれを……?」
予想外の切り返しに、晴登は困惑する。
まだ名乗ってもいないのに、この人はどうして晴登が【日城中魔術部】だとわかったのだろうか。最年少で目立つとはいえ、去年は予選落ちするようなチームだ。わざわざチェックしていたとは思えない。
「いや何、単純に気になってな。銀髪の娘もそうだが、俺は特にお前に興味がある」
「興味、ですか……?」
会ったばかりだというのに、何にそこまでの興味を示すのだろうか。結月はともかく、晴登は平々凡々な実力だというのに。
「あぁ。平凡を装っちゃいるが、お前の瞳は死地を潜り抜けてきた猛者のそれだ。まだ子供のくせに、一体どんな地獄を見たのか興味がある」
男は晴登に顔を近づけ、不敵な笑みを浮かべて舐め回すように問う。
が、その際、開いた口元の牙のようなギザ歯を見て、晴登はビビって思わず後ずさってしまった。
「あ、そんなに怯えんなよ。別にお前に危害を加えようって訳じゃねぇんだから」
「……」
「……どうやら、今は話してくれなそうだな。まぁいいぜ。また後で声かけるわ」
意図が読めない男の行動に警戒する晴登を見て、彼はこの場での追及を諦めたようだった。手を振りながら、猫背の姿勢のまま立ち去っていく。
しかし、何かを思い出したのか、途中で足を止めて振り返
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