MR編
百六十話 屍者の軍勢を打ち破れ
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蹴る。
「(さぁって)」
右手に携えた斬馬刀をくるりと180度回転させる。右を上手に左で柄の下部を受け止めそのまま上段に大きく振り上げる。アヌビスとウィスプ達を覆う光の膜まで三歩の距離、振り上げた刃が紅蓮に染まり──
「……割れろ」
薙刀 重単発技 《剛断》
薄く発行する光の膜と紅蓮の光を放つ重撃が激突し、一瞬互いの力が拮抗する────そして次の一瞬で、それは瓦解した。
「────ッ!!」
声にならない絶叫を上げて、アヌビスの身体へとウィスプ達が還っていく。右の肩口から胸までをバッサリとそれも無防備に斬られ、アヌビスのHPが目に見えて大きく減少した。ただ同時に身体の自由を取り戻した狗頭の守護神は石化した後も手放すこと無く携えていた三叉槍を構え直すと、石化前と変わらぬ神速で技後硬直によって動きを止めているリョウに向かって突き出す。先ほどのように大震脚に寄って妨害しようにも、ボスモンスターのように元来大型の体躯を持つモンスターに対しては効果が薄い為動きを止めるのは望み薄である。しかして自身に先端を向けるその穂先を一瞥もせず、リョウは笑っていた。
呼吸一拍、吸った息は声となり……吐き出す。
「“ユウキ、来い”!!」
「よっ……くも……」
青白い光が、宙を割いた。地上を移動するのではどうあがいても詰め切れない距離を紫色の燐光をまき散らして疾駆した影が、驚異的なスピードの上段斬りで以って、確実にリョウの身体を捉えるはずだったアヌビスの三叉槍を叩き落す。
「やって……くれたなーー!!」
片手剣 最上位連撃技 《ノヴァ・アセンション》
殆どの剣技に対して先手を取るとされる片手剣最速の初撃に始まる超速の連撃が、アヌビスの全身を捉え最後の一撃がその巨体を大きく後退させる。と同時に飛び込んできた小柄な影……ユウキの背に生えた翅を包んでいた燐光が消滅し、リョウの目の前に着地した。
「よぉ、よくわかったじゃねえか」
「へへー、“すっ飛んで来い”って言われたもんね、っていうか、言われるまで忘れてたんだけど」
ALOの妖精たちには、それぞれ種族ごとの特性として個別の能力を有している。その中でも闇妖精であるインプは初期能力として暗視能力と短時間の暗中飛行能力を有しているのだ。ALOにおける妖精の飛行能力は、日光あるいは月光からくる魔力をリソースにしているという設定になっている為、通常屋内ダンジョンの内部や地下世界であるヨツンヘイムでは飛行不能に陥るという設定なのだが……そのインプが有する初期スキルと、スプリガンの持つトレジャーハントの上位スキルだけは例外なのである。その能力を使用すれば一瞬で距離を詰められるとユウキが気付いてくれるかどうかについては、一種の賭けだったが……。
「そいつはまだまだ仕様に疎い証拠だ
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