第二章
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「よいな、このままだ」
「放っておいてですね」
「それでは」
「死ぬまでここに打ちつけておけ」
こう言ってその捕虜を生かしたままにした。捕虜の傷は化膿していきそこから膿が出て来て蛆がたかる。それは脳も同じだった。
傷口から腐り膿む。そこにも蛆が湧く。
血はそのままで糞尿は垂れ流しだ。そうして今死のうとする捕虜にカリギュラは嘲りながらこう言うのだった。
「死にたいか。そのまま飢え死にするか腐るかして死ね」
捕虜は数日経って飢え死にした。その骸には蛆がたかり続け血と膿、糞尿で汚れ無残なものだった。皆そこに腐臭まで加わったおぞましい匂いに顔を顰めさせた。
ある日カリギュラにこんなことを言ってきた者がいた。
「コロシアムの獣達の餌か」
「獣達を食わせねばなりませんが」
その為の費用、それがだというのだ。
「かなりの額になっています」
「それ程までか」
「獣には新鮮な肉が必要です」
「そうか。そこまでかかっているか」
「元老院でもどうすべきかと問題になっていますが」
「そうだな。それではだ」
カリギュラは話を聞いてすぐに閃きこう言った。
「捕らえてある罪人達の中でわしもローマの神々も崇拝しない者達がいるな」
「キリスト教徒達ですか」
「皇帝も神々も信じぬ者達なぞいらぬ」
こう素っ気無く言ったのである。
「あの者達を餌にせよ」
「人を獣達の餌にせよというのですか」
「そうじゃ」
カリギュラは素っ気無く答える。
「丁度よい餌になるわ。それにじゃ」
「それにとは」
「その食われる姿を人に見せよ」」
カリギュラの顔には酷薄な笑みが浮かんできていた。それは彼が常に見せる、誰もが怯えている笑みだった。
彼はその笑みを浮かべてこう言うのだ。
「コロシアムでな」
「では」
「見世物にせよ」
具体的にはそういうことだった。
「わかったな」
「人が食われる様を人に見せるのですか」
「それがどうかしたのか」
「それは」
彼はあまりもの惨さに謹言しようとした。だが。
カリギュラが自分の気に入らぬ者に常に何をしてきたのかを知っていた。ここで自分がカリギュラに謹言をすれば。
(獣に食われるのは自分だ)
直感的に悟った、それでだった。
恐怖を飲み込みそのうえでこう皇帝に答えたのである。
「何もありません」
「異論はないな」
「はい、それでは」
「無論朕も行く」
そして人が食われる姿を見るというのだ。
「よいな。そうするぞ」
「では」
「楽しみではないか」
カリギュラは嗜虐の笑みを浮かべてそして言っていく。
「人が食われる姿がどういったものかな」
「左様ですか」
「うむ、楽しみだ」
彼はこう言ってキリスト教徒達を獣達の餌にすることにした。実際に
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