第百六話 八万の大軍その一
[8]前話 [2]次話
第百六話 八万の大軍
風魔からの報を聞いてだった、氏康は言った。
「ではじゃな」
「はい、山内上杉家も扇谷上杉家も完全に歩調を合わせ」
そうしてとだ、風魔は話した。
「そしてです」
「古河公方様もか」
「入られました」
「当家と縁組をしていてもな」
その妻が氏康の妹であるのだ。
「それでもじゃな」
「そうしたことを捨ててまでしてです」
「当家が邪魔になられたか」
「はい、そしてです」
古河公方に加えてというのだ。
「関東の当家に反感を持つ家がです」
「集まってか」
「河越城を攻めんとしております」
「やはりそう来たか」
「その軍勢の数は八万になるかと」
風魔は落ち着いた声で述べた。
「どうやら」
「多いならそれだけになると思ったがな」
「まさにですな」
「それだけの数になったな」
「はい、そしてその八万の軍勢で」
まさにというのだ。
「河越の城をです」
「攻めんと話をしておるか」
「両上杉が軸となり」
「わかった、だが今はな」
氏康はここまで聞いたうえで述べた。
「決してじゃ」
「動きませぬか」
「今動けば敵に察せられる」
「察せられますと」
「備えられるからな」
だからだというのだ。
「今はな」
「動きませぬか」
「すぐに動ける様にはしておるが」
それでもというのだ。
「相手は大軍、まともにぶつかっては勝てぬ」
「だからですな」
「今は動かぬことじゃ」
「断じて」
「敵はあえてな」
こちらは動かずにというのだ。
「河越城に引き寄せ」
「そうしてですか」
「油断させてな」
「そこからですか」
「一網打尽にする」
こう言うのだった。
「今はな」
「それでは」
「今は動かぬ」
氏康はあらためて言った、
「よいな」
「わかり申した」
「お主達もじゃ」
「見ているだけで」
「そして知らせてくれればよい」
今はというのだ。
「よいな」
「それでは」
こう言って風魔に今は敵を見させるだけで何もさせなかった、そうして氏康は時が来るのを待った。
その間今川家も武田家もこれといって動かない、氏康はそれを見てよしとした。
「やはりな」
「それぞれの家で、ですな」
「動かれていますな」
「今川殿は西に」
「武田殿は信濃にですな」
「進まれておる、和も結んだし」
両家とはというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ