第一章
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優しい犬と我儘な猫の思いやり
森家には既にミミという猫がいる、喉と胸の辺りが白いサビ猫の雌でありその性格は非常に我儘で無遠慮だ。
家の中でいつも我がもの顔で振舞っている、元野良だったが父が子猫の時に拾って一年経つが完全に家の主の様になっている。
家の一人娘である茉奈はいつもそのミミにご飯をあげたりトイレを処理したり遊んだりしつつ母の観月に話した、細面で短めの黒髪を左右で縛ってまとめている。穏やかな顔で大人しい性格がそのまま出ている。小学一年生だ。
「何でミミってこんな我儘なの？」
「猫だからよ」
母は娘にこう返した、見れば茉奈は母親似である。
「猫はそうした性格よ、ただね」
「ただ？」
「今度うちに犬も来るわよ」
「そうなるの」
「お父さんとお話してね、里親募集している子をね」
「うちで飼うの」
「引き取ってね」
そのうえでというのだ。
「飼うわよ」
「ワンちゃん何時来るの？」
「明日よ。楽しみにしていてね」
「どんな子かしら」
茉奈は家に猫だけでなく犬も来ると聞いてそうしてだった。
今度の子はどんな子だろうと楽しみになって明日が待ち遠しくなった、そしてその次の日にだった。
家に来た茶色の柴犬の子供を見て母に言った。
「この子コロッケみたいね」
「コロッケなのね」
「うん、色がね」
「そう言われるとそうだな」
犬を引き取って来た父も笑顔で頷いた、見れば眼鏡がよく似合う長方形の顔の黒髪を真ん中で分けた穏やかな顔の中年男だ。
「この毛の色は」
「そうよね、だから名前はね」
茉奈はその犬、尻尾をぱたぱたと左右に振って舌を出してへっへっと言っている彼を見つつそうして話した。
「コロにしよう」
「コロか、いい名前だな」
「うん、じゃあこの子コロね」
これで名前も決まった、そしてだった。
コロと名付けられたこの雄の柴犬は森家の犬となった、コロは謙虚で大人しい子でいつも家族に求めることはしなかった。
ご飯がなくても皿を見て小さく鳴くだけで。
「決まった時間にあげないとね」
「コロってミミと違うからなのね」
「ミミはご飯なかったら凄く催促するでしょ」
母は娘に言った。
「そうでしょ」
「うん、凄くね」
娘もそうだと答えた。
「お皿のところで何度も鳴いてそれでもだとね」
「家族の誰かのところに来て噛んで来るでしょ」
「ええ、けれどコロは」
「小さく鳴くだけだから」
皿のところでというのだ。
「だからね」
「私達もなのね」
「注意してあげてね」
「わかったわ」
茉奈は頷いた、そうしてだった。
コロには決まった時間にご飯をあげる様に気をつけた、だが。
この時茉奈は困っていることがあった、それは何故かと
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