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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第51話:伝わる想い、伝わらぬ想い
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巻き込まれて経験した恐怖と不安、絶望がその一歩を踏み出すことを躊躇わせている。
一言で言ってしまえば、怖いのだ。大人を信じてまた裏切られ、そして今度こそ透を失うような事になってしまう可能性をクリスは恐れていた。
そんな恐怖で足踏みしている己を見て、クリスは自己嫌悪に陥った。
──情けないな……あたし──
口先ではどんなに強気な態度をとっていても、結局根っこの部分は昔と変わらず弱く臆病なまま。そんな自分にクリスが心底嫌悪していると、徐に透が彼女を抱きしめた。
「わぷっ!? と、透?」
いきなり何をするのかとクリスが問い掛けるが、彼は優しく彼女を抱きしめその背をゆっくり撫でるだけであった。
するとどうだろう。先程まで感じていた恐怖や自分に対する嫌悪感が嘘のように消えていった。残ったのは透から伝わる温かさによる安心感だけ。
我ながら現金な女だと、クリスは自嘲した。たったこれだけの事で胸を占めていた不安を忘れてしまったのだから。
因みに、こんな2人だが正式に恋人関係になってはいない。何しろまだ互いを仲の良い幼馴染と言う認識で止まっていたところで捕虜となり、色恋なんて考える間もなく引き裂かれ、唐突に再会を果たしてしまったのだ。互いに告白なんてしている余裕はなかった。
閑話休題。
悩むクリスだったが、透は今すぐ彼女に答えを出させることはしなかった。もしフィーネとの件にケジメをつけ、その上で二課との合流を渋るようなら彼はその意を酌むつもりだった。
今の抱擁はそういう意味を込めてのものである。言葉を口にする事が出来ない透にとっては、そう言ったアクションこそが相手に想いを伝える為の手段であった。そしてその彼の想いは確かにクリスに伝わっていた。
「透……ありがとう。ごめんな? 何時も、迷惑かけて」
何時だってそうだ、あの頃から変わらない。透は何時だってクリスを支え、温かく包み込んでくれる。透の隣こそが彼女の居場所と言っても過言ではなかった。
居場所だから、全力で彼に甘えるし愛しいと言う想いを前面に押し出せる。
クリスは透の抱擁に応える様に彼の背に手を回した。それだけに留まらず、彼の胸板に頬擦りするように身を委ね、全身で彼を愛しく思う気持ちを伝えた。
その想いは透の胸に深く染み渡り、透のクリスへの想いを強く刺激した。
その刺激に突き動かされるように、透は彼女の見えない所で口を開く。何事かを言葉で伝えようとするが、その口から声が出ることはなかった。
胸の動きで彼が何故か声を出そうとしている事に気付いたクリスは、少し体を離して彼の事を不思議そうに見た。
「どうした、透? 何か言おうとしたのか?」
声が出せない事など彼自身が分かっている筈なのに、何
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