はたらくサーヴァント
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同じやり取りを続け、友奈と真司は同時に重大な事実に気付いた。
「「「私」「俺」たちサーヴァントだから荷物なんて持ってない!」」
サーヴァントとは、召喚された英霊。つまり、生活に必要なものは何一つ持ち合わせていない。
もともとこの世界で生活するはずもなかったのだから、二人には、真司が数日バイトで稼いだ小金以外、何も持ち合わせがなかった。
「友奈ちゃん……これって、結構やばいんじゃ」
「うん……やばいかも?」
それはつまり、生活するための準備ができないということだった。真司がこの数日で稼いだ金だけでは、現代生活に染まった友奈と真司を満足させられない。
その時。
「ご心配には及びません」
「「?」」
いつからだろうか。玄関先に忍び寄っていた人物の姿に、友奈と真司は目を飛び出した。
「うふふ……驚いていただけたようで何より」
マダムと呼ぶべき人物。肩幅の大きな体と、高級そうな紫の婦人服。紫の大きな帽子を目深にかぶった彼女は、不敵な笑みを浮かべた。
「わたくし、大家の志波美輝と申します」
「は、はあ……。はじめまして。この度はどうも……」
真司が代表して頭を下げた。すると大家さんは、
「いえいえ。今夜は私の部屋にいらっしゃい。歓迎の宴をして差し上げますわ」
彼女はじっと真司を見つめていた。
そして。
「合わせ鏡が無限の運命を形作るように、人と人との出会いも無限の運命。大切にいたしましょう。ねえ?」
何を言ったか理解できなかった。ただ、横からの真司の顔は、驚愕だけを示していた。
「真司さん?」
「あ、うん。いや、大丈夫」
取り繕ったような笑顔を向ける真司。
続いて大家さんは、友奈に歩み寄る。
「わたくし、丁度昨日四国から帰ってきましたの。貴女も四国はよくご存じ?」
「?」
友奈は、驚きの表情を隠せなかった。そのまま友奈の耳元で、大家は囁いた。
「特に香川が好みでして。本日は駆ってきた讃岐うどんをご馳走しますわ」
四国。香川。讃岐うどん。これを友奈へ語るのは偶然か、必然か。混乱で、内心パニックに陥ってしまった。
ふふふと微笑を続ける大家さんは、そのまま奥の部屋へ戻っていった。
静かになった新しい部屋の中、真司が尋ねる。
「……なんか、食べに行くか?」
「……うん。そうだね」
今の友奈には、それしか言えなかった。
「よろしくお願いします!」
そうして始まった、真司のアルバイト。
当面の生活費を稼ぐために、ある程度の条件がいいところを探した結果、真司が行きついたのは、大手ファーストフード店だった。赤いトレードマークの帽子
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