第二章
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その顔は何処か清々しくこうも言うのだった。
「しかしそれでもじゃ」
「あの者はお嫌いではないですか」
「上杉謙信は」
「この戦国の世であそこまで義を果たすか」
笑みさえ浮かべての言葉だった。
「そんな者がおるとはな」
「そうですな。弱き者は必ず助ける」
「見捨てることはしませぬ」
「あくまで義の為に戦をする」
「その言葉通りにしておりますな」
「愚かと言えば愚かじゃ」
戦国の世では騙し騙されだ。そして土地を奪い合うものだ。そのどちらもせずただひたすら義の為に戦う謙信はどうかというのだ。
「しかしそれでもじゃ」
「その義の為に生き戦う上杉謙信を」
「嫌いではありませぬか」
「見事よ。面白い奴じゃ」
こう言うのだった。決して曇っても顰めてもいない顔で。
そしてその顔にだった。信玄はまた言った。
「ではその義、最後まで見たいのう」
「そうされますか。それでは」
「あの者がまた攻めて来ても」
「倒せれば倒したいがな」
謙信はその義で信濃に来る。これは実に厄介なことだ。
武田にとっては迷惑このうえない。だjから謙信は何とかしたい。しかし謙信のあまりもの強さ故にそれができないというのだ。
それでだ。こう言うのだった。
「それが無理ならな」
「戦わずにですか」
「帰るのを待ちますか」
「それも戦じゃ」
勝たなくてもいいというのだ。負けなければ。
「ああした者とは戦うことはない」
「見ていくだけですか」
「そうされますか」
「うむ。しかしじゃ」
ここでこうも言う信玄だった。
「あれだけの者、果たしてどうなっていくか」
「それも御覧になられたいですか」
「殿は」
「そうしたいのう。是非共な」
信玄もまた杯を手に上を見上げていた。そこにある月は何も語らないが信玄にもまたあるものを見せていたのだった。
その両者は度々川中島で激突した。そして今回はというと。
これまでにない激戦だった。武田も上杉も全力でぶつかる。山にいる上杉軍を挟み撃ちにしようとした武田軍だが謙信はそれをすぐに見抜いた。そうして。
朝もやの中で信玄の本陣を急襲したのだ。しかも正面から。
両者は忽ち激しい戦を繰り広げた。その中において。
謙信は自ら馬に乗りこう家臣達に言った。
「わしも行くぞ」
「殿御自らですか」
「敵に切り込まれますか」
「うむ、そうする」
普通は有り得ないが謙信は常だった。総大将であるが自ら切り込むこともざらだった。
そして今回もそうするというのだ。しかも。
「甲斐の虎を見て来る」
「何と、武田信玄をですか」
「あの者のところに行かれますか」
「天下の奸臣武田信玄」
謙信はここでもこの呼び名で信玄を表現した。
「どの様な者か一度見てみたい」
「
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