第三章
[8]前話
「普通の方が飼われることは」
「では」
鏡花は獣医の言葉を受けて熟考した、そして結論を出した。その結論は一体どういったものかというと。
「お願いします」
「わかりました」
動物園に事情を話してパイを引き渡した、それが彼女の結論だった。動物園の飼育員もその言葉に頷いた。
「それでは」
「大事にして下さい」
「そのこともわかっています、ですが」
「ですが?」
「事情は聞かせて頂きましたが」
若い男性の飼育員は難しい顔で述べた。
「そうしたことはなくなって欲しいですね」
「本当にそう思います」
「犬は犬、狐は狐ですから」
だからだというのだ。
「そうしたことは」
「全くですよね」
「はい、ではこの子はうちで育てますから」
「会いに行っていいでしょうか」
「何時でも」
動物園の人は鏡花に笑顔で応えた、そしてだった。
パイは動物園に引き取られそこで育てられることになった、そして鏡花は時間があるといつも動物園に行きパイに会う様になった。
この時もそうで雅梅も一緒だった。
雅梅は狐の檻の前にいてパイを見ている鏡花に声をかけた。
「今もパイのこと好きね」
「家族だったからね」
それでというのだ。
「やっぱりね」
「そうよね」
「だからね」
それでというのだ。
「今もこうして会ってるの」
「一緒に過ごせないのは残念よね」
「ええ、けれどここに来れば会えるから」
だからだというのだ。
「こうしてね」
「今も会ってるのね」
「ええ、パイ今日も来たわ」
鏡花はそのパイにも声をかけた。白いのですぐにわかる。
「こんにちわ」
「コーーン」
パイも鏡花に応えた、そして。
鏡花の方に歩いてきてだ、笑顔を向けた、そうして。
鏡花も笑顔で彼にさらに話し掛けた、雅梅はそんな彼等を見て彼女も自然と笑顔になった。その絆を見ることが出来て。
プードル犬じゃない 完
2020・9・26
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