その名はクトリ
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「ああ」と、息を吐く。
「君は確か、チー君を助けてくれた人」
「会うのは二回目、だよね。俺は松菜ハルト。で、こっちはチノちゃん」
「はじめまして」
チノが、挨拶の準備なんてしてない、というような声を上げた。
すると、蒼い少女はクスクスと笑い、
「クトリ。クトリ・ノタ・セニオリス」
と名乗った。
クトリ。その名を口の中で反芻させたハルトは、そのまま尋ねる。
「珍しい名前だね。外国の人?」
「ううん。この名前、病院でつけられただけだよ」
クトリはにっこりとほほ笑み、引き続き透明な音楽を鳴らす。
「えっと……あ、思い出した」
クトリはポンと手を叩く。
「この前から入院してた子でしょ? 私たち、何回か病院ですれ違ったけど、覚えてない?」
「はい。覚えています」
チノは頷いた。
「クトリさんも、こちらに入院されていたんですか?」
「ううん。私はちょっと違うかな」
クトリは髪を抑える。風で靡く姿が、ハルトにはとても美しく思えた。
「私は、この病院に住んでるから」
「住んでる?」
ハルトが首を傾げる。すると、クトリは両手を後ろで組みながら教えてくれた。
「結構多いらしいよ。産んだ子供を病院に置いたままいなくなる親って。私もチー君も、そういう子供」
「ごめんなさい。私……」
「気にしないで」
顔を下げるチノを、クトリが慌てて止めた。
「そういうの、慣れてるし。それに、病院で色んなお手伝いもできるから、不満もないし」
「そうですか……」
「それより、えっと……君、ハルト君、でいい?」
「何?」
クトリは頬をかきながら、少し恥ずかしそうに尋ねた。
「あの……さ。チー君があれから、君の手品を見たいって言って聞いてくれないんだけど。よかったら、その……タネとか教えてくれない?」
「ええ? それはダメだよ。芸ってのは、自分で見つけて自分で身に付けるものだから。まあ、マネしたいなら見せてあげるけど」
「そう……」
クトリはしゅんと落ち込む。
するとチノは、ハルトの袖を引いて、
「それでしたらハルトさん。たまに、クトリさんたちに見せてあげてはいかがですか?」
「まあ、それならいいけど。チノちゃんはいいの?」
「はい。私はそれでも。事あるごとに抜けるココアさんに比べたら、ハルトさんの慰問くらい何てことありません」
「これは慰問じゃないと思うけど……チノちゃん。もしかして覚えたての難しい言葉かたっぱしから使いたがってない?」
「そんなことありません」
「そう? まあ、チノちゃんがそれでいいならいいけど……クトリちゃんもそれでいい?」
「本当?」
すると、クトリがハルトに一気に顔を近づける。その青
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