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レーヴァティン
第百七十二話 甲斐平定その十四

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「だからいささか能力がなくとも」
「努力する人物ならですね」
「上様は用いられますね」
「そうされますね」
「そうだ、そしてその分野で無能でもな」
 それでもというのだ。
「他の分野ではどうか」
「人には向き不向きがありますね」
「それぞれ得手不得手があります」
「得意な分野なら能力を発揮する」
「そうしてくれますね」
「学問は不向きでもだ」
 それでもというのだ。
「剣術の天才がいて努力家ならだ」
「剣術で大いに伸びる」
「それでそちらで用いればいい」
「そうなのですね」
「そうだ、だが剣術に才があろうともだ」
 英雄はさらに話した。
「それでも性根が腐っていればどうだ」
「それこそ下手をすれば人斬りです」
「人斬り侍になり果てます」
「そうした輩は処刑するしかないですな」
「如何に剣術の才があろうとも」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「だから俺は性根が腐っている輩はな」
「決して用いない」
「性根が腐っている輩は」
「そうなのですね」
「賄賂を求めたり女好きならまだいい」
 そうした者はまだというのだ。
「能力があればな、しかしな」
「性根が腐っている」
「そこまでになりますと」
「用いられないですか」
「無能な働き者は向いている分野では有能な働き者となる」 
 ゼークトの区分は実は適材適所が抜け落ちている、英雄はこう思いつつそのうえで幕臣達に対して話をした。
「だが屑はな」
「何処までも屑ですね」
「変わらない」
「そうなのですね」
「だからだ」
 それでというのだ。
「用いないどころかな」
「処罰する」
「そうされますか」
「その時は」
「そうする、ではな」
 英雄はあらためて言った。
「これからな」
「はい、それでは」
「甲斐の主と会いましょう」
「そうしましょう」
「この場でな」
 こう言ってだった、英雄は甲斐の主と会うことになった。彼は東海と甲信の平定の最後の段階に入ろうとしていた。


第百七十二話   完


                  2020・8・1
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