プロローグ
敗残狼の反攻の狼煙
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?わけが分からん。首領とは誰だ?」
「我らが首領様の崇高な理想は『選ばれた優秀な人間がその他人類を支配する世界』。お前はその栄光ある優秀な人間の一人に選ばれたのだ」
「答えになってない。質問に答えろ。首領とは誰だ?」
『死神博士!私から話そう』
突如、どす黒く重苦しい空気がその場を支配した。余りのものにゾルは思わずその場にもう一度、ひざまずいてしまった。
声だけではあるがゾルが今まで聞いたこともないほどの威圧的な恐怖と圧倒的な威厳を含んでいた。
(このオーラ、総統閣下の比ではない!!)
ゾルはヒトラーに会った時のことを思い出した。あの時でさえ、ヒトラーの指導者然としたオーラに息を呑んだのに、今度のはそれとは比べ物にならないほど強大なものだった。
例えるなら『実体のないイドの怪物』。
姿が見えないのに声だけがその場に響き渡っている。
(馬鹿な!この俺が恐れているだと!?この正体不明の男に?それも声だけだぞ!!)
『バカラシン・イイデノビッチ・ゾルよ。貴様は選ばれた栄光ある男だ。過酷な戦場を耐え、生き延びたその肉体、知力、精神力……どれをとっても素晴らしい。貴様には我が組織に入る資格があるのだ』
数年ぶりに聞いた称賛そして肯定の言葉、それらがゾルの心に染み渡る。その上、『過酷な戦場を耐えた』と労いの言葉までかけられ、ゾルは心が洗われた気がした。
『いいか、ゾルよ。この世界を変える時が来たのだ。貴様のような優れた人材が世界を統べるべきなのだ。無能で愚かな人間が各国の舵取りをするこの世界に終止符を打つべく、共に戦おうではないか!!』
「世界に終止符…?…そんなこと……できるのか?」
ゾルからすればイギリス、米国、ソ連、フランスに負けたのに今度は世界中を相手にして勝てるのか不安で仕方がなかった。
だが首領の返答は早かった。
『できる。断言しよう。我々の科学技術、軍事力を使えば容易いことだ。そしてこの腐敗しきった世界を征服した暁には我々の大鷲の旗が世界中に翻り、改造人間による完璧な理想社会が実現するのだ』
首領の言葉には妙な説得力があった。
『今の世界を見よ。無能で愚劣な一握りの人間がエリート気取りで真に優秀な人間を奴隷のように扱っている。
だが私の理想とする未来は優れた人間を貴様のような改造人間に改造し、世界を再構築することだ。奴隷でいるのは無能な人間だけでよいのだ』
考え込むゾルに首領は少し、間を開けて続けた。
『それに……もっと早い段階から世界が優秀な人間のみで統治されていれば先の大戦は起こらなかったのではないか?貴様の祖国にもっと優秀な人間が多ければ、貴様の同胞や部下が死ぬこと
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