プロローグ
敗残狼の反攻の狼煙
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て守るべきものも失い、改造人間であるが故に普通の人間としての肉体も失ってしまった彼らを迎え入れる場所など存在しない。元々、それを悟っていたのだろう。加えて、最初の部下の自決が引き金となったことは明白だった。
ここまで人数が減ればまともな抵抗もできない。ゾルは『連隊の解散』を宣言した。せめて生き残った者達だけでもそれぞれの道を歩んで欲しい。そう思ったのだ。部下達はそれぞれバラバラに散り、どこに行ったのかさえ分からなかった。
それから彼の辛く厳しい逃避行が始まった。改造人間部隊の生き残りであるゾルは世界中の政府機関から目をつけられ、追われる身となった。さらにかつてアウシュビッツの管理人を務めていたこともあり、各国の諜報機関やユダヤ人武装組織からもナチス残党としてマークされていた。
今まで何人もの刺客がゾルを逮捕或いは抹殺する為に送り込まれたが彼はそれを持ち前の改造された肉体でなんとか撃退してきた。だが改造人間として不完全な状態故かそれももはや限界だった。彼の肉体は長期による戦闘で改造人間としてもただの人間としてもボロボロになってしまっていた。あと1回変身できればいい方だろう。もはや逃げるだけで精一杯である。
アイヒマンやヨーゼフ・メンゲレのように南米に亡命することも考えたがドイツ軍人として、アーリア人としてのプライドがそれを許さなかった。迫る追手の影を背中に感じながらひっそりと生きるなんてゴメンだった。
いっそのこと部下達のように自爆しようかと思ったことさえあった。しかし、ゾルは未だに信仰を捨てられずにいた。それが既に崩壊した信仰であることを分かっていながらも。なぜなら、その信仰を一番信じていたのも自分自身だったからだ。
その信仰を守るのは自分で最後にしよう。自分は改造人間連隊の大佐なのだから。
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そして時は1947年のリヒテンシュタインに戻る。
ゾルこと狼男は先程の3人組の男達の血まみれの死体を前にぜぇぜぇと荒い息を吐いていた。
しかし身体はもう既に改造人間として限界をとうに超えていた。
足元がおぼつかず、地に膝をついてしまい、その上、血反吐を吐いた。
「…ぐ、ぐぐ……ユダヤ野郎どもめ…出しゃばりやがって」
悲鳴を上げる肉体にムチを打ちながらも
襲撃者を撃退できたことにゾルが安堵した……その瞬間。
「まさか。あれで終わりだとでも?そんなわけねーだろ」
背後から声がしてゾルはバッ!と振り返る。背後にはもう10人ほどの男達がいた。彼らは先程の男達とは違い、MP40やSTG44で完全武装していた。
元ドイツ軍人の自分を殺そうとしている目の前の集団が旧ドイツ軍の銃を握りしめているのは皮肉だった。
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