プロローグ
敗残狼の反攻の狼煙
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残っていない。いや、ここまで急激に人数が減った理由は補給や兵站だけではなかった。
改造人間部隊という特性上、決してその存在を公にできない。さらに死体一つでも敵の手に渡れば改造人間技術が敵国に流入し、祖国ドイツにとって大きな損失となることは明白であった。そのため、全員に小型の自決用高性能爆弾を体内に埋め込まれていた。
改造人間といえど皆、急ごしらえで作られた不完全体であり、不死身でもない。
銃弾には耐えられても毒ガスや大規模な爆発…例えば爆撃を喰らえば重症を負う。
つまり、本来なら野戦病院に連れていけば治るであろう怪我でも敵に『鹵獲』される前に自爆し、身体をバラバラにしなければならないのだ。
しかし、そんな極めて絶望的な状況の中でもゾルの連隊は戦い続けた。国の為、総統閣下の為、同胞の為に戦い続けるしかなかった。
そんないつ壊れてもおかしくない彼らを唯一、支えていたのはとある『信仰』だった。
自分達がここで戦い続ける限り、第三帝国は存続し続ける。第三帝国があり続ける限り、ゲルマン民族は存続することができる。ゲルマン民族が残ればまたいつか不死鳥の如く立ち上がることができると。
自分達が……自分達だけが少しの間、苦しむだけで……。
それはまさに致死量の血に塗れた信仰であった。
――――――――――――――――――――――――――――――
そしてゾル達の運命を変えてしまう日がやって来てしまった。
1945年5月17日―。
この日、ドイツは連合国に降伏した。
ヨーロッパ各地の戦場にいたドイツ軍部隊は哀しみに昏れながら武装解除に応じた。
当然、ドイツ降伏の報せはゾルの連隊にも届いていた。
「無条件降伏……だと……?」
連隊の指揮所となっている天幕の中で『祖国の無条件降伏』を伝えるラジオを前にして、ゾルは信じられなかった。
彼にとってはその情報があまりにも荒唐無稽過ぎたのだ。
ベルリンにソ連軍が侵攻し、これを占領。さらに市街地や政府機関も制圧された。それだけでも目まいがしそうだったのに唯一無二の偉大なる総統閣下が既に死亡したと聞いた時には手がワラワラと震え、まともに立つことすら難しくなった。
「馬鹿な…そんなまさか……」
ゾルは顔を真っ青にしてラジオの前で膝まずいた。
そんなゾルを見て、部下達が血気盛んに叫んだ。
「大佐!これはきっと敵の情報工作に違いありません!!今からベルリンに向かえばまだ間に合います!」
「そうです!ここでは米帝を食い止めるのには成功してるじゃないですか!!我々はまだ戦えるんだ!!徹底抗戦です!」
「すぐにでもベルリンに向かい、イワン共から帝都を解放しましょう!!」
皆、
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