第一章
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泣くことはない
急にクラスが騒がしくなった。
男子生徒達は不意に騒がしくなったクラスの中にびっくりして声がした方を見た。
「何だ一体」
「何があったんだよ」
声がしたのはクラスの後ろの方だった。そこの中央で一人の女の子が泣いていて他の女の子達が周りを囲んでいた。
男組はそれを見てまずはこう思った。
「いじめか?」
「それか?」
「いや、あれ竹達だから違うぞ」
「あいついじめられたりしないからな」
「だから違うぞ」
このことはすぐにわかった。泣いている少女、竹達すみれは少なくともいじめられる様な娘ではなかった。むしろ怒った場合はその逆だった。
「あいつ怒ったら怖いからな」
「だよな。揉めた他のクラスの奴に相当なことしたからな」
「寮生の娘達に声かけて集団で怒鳴りつけたりな」
すみれは寮生だ。他の県からこの学校に来ていて寮に入って通学しているのだ。
「ああ、あれマジでやばかったぞ」
「洒落にならなかったぜ」
男組はその時のことを思い出して声を潜めさせて話す。
「そこまでするかってな」
「相手の下校中に校門で待ってて聞こえる様に陰口言ったりな」
「階段の上から怒鳴りつけたりもしたよな」
「周りの女組も冷たい笑いで見下ろしてな」
「というか女って怖いな」
「ああ、女程怖いものないぜ」
「特にあいつはな」
こう口々に言ってすみれを見ていた。だが今の彼女はというと。
俯いて左手で目を何度も拭っていた。その目は真っ赤になっていて涙がしきりに流れてきているのが見える。
そして周りの女の子達がとにかく必死に慰めていた。
「ちょっと落ち着いてね」
「そう、もう少しね」
「すみれちゃん悪くないから」
「悪いのは向こうじゃない」
「何でよ」
すみれはその泣いている目で言う。見ればやや丸い顔で黒い髪をかなり長く伸ばし身体の前に左右に持ってきてもいる。勿論後ろにも流している。
大きくはっきりとした黒目がちの目で唇は小さく引き締まっている。頬は少し赤らんでいる感じだ。
背は一六〇位で頭には赤いリボンもありお嬢様、それもロシア的なものを感じさせる。その彼女がしきりに泣いて言うのである。
「何でこんなことになるのよ」
「だから。落ち着いてよ」
「すみれちゃんに問題ないじゃない」
「本当に悪いのはあいつだから」
「もうちょっと落ち着いて」
「落ち着けないから」
すみれは涙を拭きながら周りに返す。
「こんなことになって」
「?失恋か?」
「喧嘩か?」
男組はすみれ達の言葉からこう察した。
「ひょっとしてな」
「どっちかか?」
「喧嘩とかならな」
男組はすみれのきついと言っていい性格からこのことについてはこう話した。
「あんなのと
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