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お世話な親切
第五章

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「だって。あのままだと津波ちゃん恥ずかしい思いをするから」
「枝織ちゃんが可哀想だから」
「だから言ったのよ」
「そうしたのよ」
「それで喧嘩してどうするのよ」
 尚の今度の口調は咎めるものだった。
「善意から喧嘩になったら馬鹿馬鹿しいわよ」
「じゃあ私達どうすればいいの?」
「一体」
「だから。二人共お互いを気遣ってじゃない」
 それはその通りだというのだ。
「だったら喧嘩なんかしないでね」
「それでなの」
「喧嘩をしないで」
「仲直りして」
 尚は自分も思っていてクラスメイト達も思っていることをそのまま二人に言った。
「そうして。いいわね」
「仲直りって」 
 二人は同時に尚に応えた。その顔は晴れないものだった。
「それってちょっと」
「何か」
「だから。二人共気にかけてのことじゃない」
 尚は躊躇を見せる二人にまた言った。
「そういうので喧嘩するなんて本当に駄目だから」
「だから仲直りしろっていうのね」
「私達は」
「その通りよ。なら聞くけれど」
「?何を?」
「何を聞くの?」
「若しも私がどっちかに意地悪をしたら」
 あえて悪い例えを出した尚だった。
「皆を煽ってね。集団でいじめをしたらどうするの?」
「そんなの決まってるじゃない」
 二人は脊髄反射的に返した。
「津波ちゃんいじめたら許さないわよ」
「枝織ちゃんは私の友達よ」
「いじめとか絶対によくないから」
「そんなことしたら許さないから」
「ほら、そう言うじゃない」
 その通りだと微笑んで返す尚だった。
「そういうことよ。だからね」
「ここはなの」
「私達は」
「そうよ。仲直りしてくれるかしら」
 これが尚が二人に言いたいことだった。
「もうね」
「けれど津波ちゃんが」
「枝織ちゃんが」 
 まだ言う二人だった。とはいってもお互いを見合っていてもう睨み合う様なことはしていなかった。ただし二人はそのことに気付いてはいない。
 尚は気付いていてそれでこう二人に言った。
「じゃあね」
「じゃあ?」
「じゃあっていうと?」
「お茶飲みましょう」
 茶道部らしい言葉だった。
「そうしましょう」
「お茶ね」
「それね」
「そう、飲みましょう」
 こう二人に提案するのだった。
「今からね」
「ええ、それじゃあ」
「今からね」
「淹れるのは誰かしら」
 尚は微笑んで自分の言葉に頷いた二人に問うた。
「それは」
「私が」 
 枝織と津波は同時に名乗り出た。
「淹れていい?」
「そうして」
「ちょっと。二人同時にっていうのは」
 尚はその二人に苦笑いで返した。
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