第51話 若気の驕り
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テル中佐がネグロポンティ氏と同属異系か知りたくなって、俺は魔術師のセリフをまるまるパクって応じた。
「我が自由の国では親の罪が子に伝染するとは過分にして知りませんでしたが?」
「そういうことを言っているわけではない」
「それ以外には聞こえませんが……」
「……彼女の存在、そして彼女に食事を作らせていること自体が評判になれば、司令部の風紀を乱す或いは乱れていると周囲に誤解されないかということだ」
「存在のことを言うのでしたら、彼女をこの司令部に配属させたのは統合作戦本部人事部軍属課ですので、そちらにお問い合わせください。司令部直属の軍属従卒任務として、『司令部の機能を十全に運用しうる為に、軍職権外での補助任務を全うする』ことが求められております。昼食を司令部内でとれるように差配したのは小官で、ビュコック司令官もご了解済みです」
虎の威を借りる技はマーロヴィアで散々鍛えられたので、中佐は俺に対して細く整った眉を吊り上げて俺を威圧しようとしても柳に風だ。
だいたい従卒が食事を作ったくらいで風紀を乱すなんて、昨今憲兵隊でも言わないような風紀委員みたいなセリフを言うとは、キャゼルヌが言う融通の利かなさ以上に、自己保身に対する意識が強そうに見える。ブライトウェル嬢に対する意識の持ちようも、モンティージャ中佐のように明確な考え方の上に立っているわけでもない。
ただ彼がどのような考え方にしても、年長の一軍人の自己保身から一五歳の少女に対してつらく当たるようなことは、例え世間が許しても第四四機動集団司令部と俺が許すわけにはいかない。とはいえ、彼が不安や不満を持って今後勤務されても困る。モンティージャ中佐が辛く当たることはしないだろうと分かるだけに、もう一人の中佐にもそうなってもらいたいと思って俺はあえて下手に出て別側面から攻勢をかけた。
「大変失礼ながら、カステル中佐は……もしかして香辛料が苦手でいらっしゃいますか?」
「……いや、そうではないが」
「確かに彼女のジャンバラヤは美味なのですが、やはり料理の都合上香辛料が強いのは致し方なく……どうでしょう、中佐。まだ一五歳の彼女の未来もお考えいただいて、ぜひ今後『も』彼女の料理を評価していただければ」
ブライトウェル嬢がまだ『未成年』という点を強調して、俺はあえて中佐に年長者の余裕を見せるよう促した。案の定というか、苦々しいというよりはバツが悪いと思ったのか、渋い顔をして「よかろう」と応えて言った。
「どうやら彼女は味付けというモノを調味料に頼る悪い癖があるようだ。それは矯正されなくてはならない。それには貴官も同意してくれるな?」
……どうやら中佐は本気で香辛料が苦手だったのかもしれない。それとも地球時代から続く血がなせる業なのだろうか。この三日後。司令部全員が揃って
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