第八幕その五
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「迷宮の番人の一人だよ」
「そうですか」
「この川は橋じゃなくてね」
ビルはジョージに前にある川を指差してお話しました。
「その下にある迷宮を通って先に進むんだ」
「橋を渡るんじゃなくて」
「そう、迷宮を通ってね」
橋の下にあるそこをというのです。
「そうするんだ」
「そうですか」
「今から川の先に行くね」
「ええ、そのつもりよ」
ビルにドロシーが答えました。
「今からね」
「貴女はドロシー王女ですね」
ビルはドロシーを見て言いました。
「はじめまして」
「ええ、ここに来たのははじめてだったわね」
「そうでしたね」
「オズの国は次々に色々な場所が出来るから」
それでというのです。
「幾ら巡ってもね」
「オズの国の全ての場所は巡れないですね」
「そうなのよね、けれどね」
それでもというのです。
「今からね」
「迷宮にですね」
「入らせてもらうわ」
こうミノタウロスにお話しました。
「そうして先に進ませてもらうわ」
「それでは、ただその前に」
「その前に?」
「お昼の時間ですので」
それでというのです。
「お食事にされては。私もここで食事にしますので」
「そうするのね」
「はい、メニューはレタスとトマト、ラディッシュに胡瓜とセロリのサラダに」
ビルはドロシーに自分が食べるものを笑みで紹介します。
「チーズマカロニ、それとフルーツの盛り合わせを食べます」
「お野菜と果物ね」
「ミノタウロスは菜食主義ですから」
それでというのです。
「いつもこうしたメニューです、あと草も食べますよ」
「その辺りの」
「牛達と一緒に」
「そういえば貴方の歯は牛の歯ですね」
ジョージはビルの開いたお口を見て言いました。
「そうですね」
「牛の頭だからね」
「だからですか」
「歯もね」
こちらもというのです。
「牛のものだよ」
「ライオンの歯じゃないですね」
「まさか、それは神話のミノタウロスだね」
ビルもこのお話のことに言及しました。
「そうだね」
「はい、そうですが」
「あれはおかしいね」
「牛なのにライオンの歯というのは」
「身体は人間なのにね」
「そういえばそうですね」
「どうしてああなったか私はわからないけれど」
ビルはジョージに穏やかな口調でお話します、それは彼の人柄が出ていると言っていいものでした。
「おかしなことだよ」
「牛と人間ならですね」
「歯は牛かね」
「若しくは人間ですね」
「どちらかになる筈だよ」
「そこがおかしいですね」
「そもそもね」
こう言うのでした。
「おかしなことだよ」
「そうなのよね」
ドロシーもここで言います。
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