第二章
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それと共に時間は進む、遂に十二時になった。
すると急に宇山は自分の席でこんなことを言い出した。
「はい、今日は終わり」
「やった」
紘はその言葉を聞いて思わず言葉を出した。
「帰るんだな」
「部屋で休みましょう」
「部屋?」
「あら、まだいたのね」
宇山は彼の言葉に気付いて顔を向けてきた。
「十二時よ。あまり根詰めて仕事したら駄目よ」
「宇山さんこそ」
紘はその宇山に顔を向けて思わずこう言ってしまった。
「何時出社して何時帰るんですか」
「何時って。ずっとここにいるわよ」
「ずっと?」
「ここのビルが私の家だから」
宇山は平然と紘にとって衝撃の事実を話した。
「だからね」
「私の家って」
「主人がこのビルのオーナーで一階が私達の家になってるのよ」
「!?そういえば」
紘はここで気付いた。彼等の会社は実は支社で本社は神戸にあるのだ。
それでこのビルの五階に支社であるオフィスがある。全部で十階で一階はオーナーの家になっているのだ。
それでそのオーナーが彼女の夫だというのだ。
「それでなのよ」
「っていうか結婚されてたんですか!?」
「してるわよ」
宇山はにこりと笑って紘に言ってくる。
「子供もいるわよ」
「そうだったんですか」
「ついでに言えばこの会社には高校卒業と一緒に入ってね」
それで今まで勤務しているというのだ。
「こうしてるのよ」
「それはわかりましたけれど」
彼女の家庭の事情等はわかった。だがまだ聞きたいことがあり実際に問うた。
「あの、どうして朝早くて夜遅いんですか?」
「ビルの管理の仕事もしてるからなのよ。つまり家の仕事もね」
「それでなんですか」
「この会社の雑務も任されてるし」
総務を一人でやっているというのだ。
「それでだからね」
「誰よりも早く出て早く帰ってるんですか」
「そうなのよ。今日は特別遅いけれどいつも最後になるわね」
宇山は紘に彼の知りたいことを話した。
「そうなってるのよ」
「そうなんですか」
「そう。それでね」
「それで?」
「もう十二時だから早く帰りなさい、お仕事が残っていても明日に回して」
そして早く帰って休めというのだ。
「もう事務所も閉めるから」
「ですか」
「まさか私が何時出社して何時退社するか気になったとかじゃないでしょうね」
宇山はくすりと笑って確信を指摘してきた。
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