ターン32 鉄砲水と古代の叡智
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烈歓迎ありがとよっ!」
聞こえないだろうとは思いつつも一応怒鳴りつけ、第2、第3の攻撃に備えるためジグザグにボートを走らせる。すでに居場所がばれているのならばこそこそする必要もないと再び加速したその真後ろで、またしても水柱が上がる。
「こんの……!」
右、左、右、右、正面からくる、減速……一気に加速。魚雷の浮上する音は、モーターの爆音に打ち消されて聞こえない。にもかかわらず糸巻が次々に襲い来る攻撃をどうにか回避し続けていられるのは、ひとえにデュエリストとして散々鍛えられた勝負勘のたまものだった。
海面上の孤軍奮闘は、いったいどれだけ続いたろうか。当然時計に目を通す暇もなく右に左にと舵を回していくうちに、ふと彼女の脳裏を嫌な考えがよぎった。この調子で、このボートの燃料はいつまで持つだろうか?燃料計……駄目だ、その前に右にカーブ。次はまた右、また加速……ほんの1瞬たりとも、よそ見をするような余裕はない。
しかし現実問題として、こんな無茶な運転をしていては燃料切れも時間の問題でしかない。そうなったら最後、先ほどから執拗に自分を狙うこの爆発がこんなボートなど真っ二つにしてしまうだろう。波しぶきとは違う冷たい汗が首筋を伝うが、それをぬぐう余裕もない。
じりじりと追い詰められていく彼女の視界の端で、ほんのわずかに光が見えた。罠の可能性もあるが、このままではどうせおしまいだ。その光の正体も確認せず、思い切りそちらの方向へと舵を切る。一気に加速する後ろで爆発を感じながら次の瞬間、視界を防いでいた霧を突っ切って大海原のど真ん中へと飛び出していた。
「クソッ、振り出しかよ……!」
1瞬これで偶然にもプラントに辿り着けたのかとも期待したが、そこまでうまい話もなく。迷いの霧の外に出たことで再び位置を指し示したGPSとコンパスで現在地が霧に飛び込んだ地点から数キロ程度離れた場所であることを確認し、案の定残り少なくなっていた燃料にも目を通す。ここからどうするにせよ、一度出直す必要がありそうだ。
「……で、僕?」
「おう。鼓は帰っちまったし鳥居もアレだし、アタシらの世代が残したゴミの始末に次の世代の八卦ちゃん達なんて間違っても引っ張り出せないしな。他の人員なんて本部に申請してうだうだ会議やって……なんての待ってたらそれこそ手遅れだ。その点アンタなら腕もたつし、アタシにゃ想像もつかない不思議な技だってできるだろ?頼むよ、1人どうにかしてくれりゃ後はアタシでもどうにかできる。バイト代出すからさ」
再び家紋町の地を踏んだ糸巻が真っ先に向かったのは、町中のとあるケーキ屋。厨房の奥からエプロン姿で顔を出した少年、遊野清明を半ば強引に引きずり出してこれまでの経緯を簡単に説明し、協力を要請する。
正直なところ糸巻は、こ
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