第百四話 まずすることその十一
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「後は守るだけ、関東管領になり」
「それでよしですな」
「当家はな」
こう言うのだった。
「お主もそれはわかっておるな」
「確かに」
これが幻庵の返事だった。
「父上も言っておられたので」
「ならよい、ではな」
「はい、関東の覇者を目指し」
「宜しく頼む」
「さすれば」
幻庵も頷いてだった。
氏綱と話した、氏綱は家臣達にも話し我が子達にも話し最後は氏康も読んで彼に話した。その彼に言うことはというと。
「お主の望む様にじゃ」
「すればよいですか」
「お主はわし以上の器じゃ」
だからだというのだ。
「そのお主の思う様にすればな」
それでというのだ。
「よい」
「左様でありますな」
「そしてじゃ」
「北条家をですな」
「栄えさせよ」
こうも言った。
「よいな」
「必ずや」
「わしが言うのはそれだけじゃ」
「そうですか」
「ただどうもな」
「どうもといいますと」
「越後もな」
氏綱はこの国のことも氏康に話した。
「気をつけねばならぬやもな」
「北陸のあの国もですか」
「関東を掌握したならあの国とも境を接しよう」
「はい、上野を手に入れたならば」
「上野は今は上杉家の領地であるからな」
だからだというのだ。
「両上杉家を倒せばな」
「その時はですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「越後と接するからな」
「だからですな」
「気をつけておくのじゃ」
「今越後は長尾家が治めていますな」
「守護代としてな」
「その長尾家のこともな」
氏康にさらに話した。
「よいな」
「見ておきます」
「頼むぞ、長尾家にも出来物が現れれば」
「そして関東に来れば」
「その時は厄介であるからな」
こう氏康に話していく。
「よいな」
「はい、見ておきます」
「そういうことでな」
「では」
「うむ、これだけ話せばもうよい」
こう言ってだった。
氏綱は話を止めた、そうして程なくして静かに息を引き取った。その顔は実に穏やかなものであった。
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