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黄泉ブックタワー
第三章 黒き天使
第12話 (やっぱり、最高だよ)
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た。そんなことをするくらいなら自分は消滅したほうがいいと考えたのだ。だから十八歳になる直前に、人間と最初で最後の契約をして願いを叶え、対価を取らずそのまま消滅することを決意した。それは父親である私も了承済みだ」

「そんな……」

 あまりにも衝撃的だった。
 契約を交わしたときには、予想だにしなかったことだ。
 だが――。

「息子は小さいころに、こう言っていたよ。『願いを叶えるって、いいことだよな? いいことをすると俺は嬉しくて楽しいのに、どうしてその対価を取らないといけないんだろ?』とね。息子と同じ時を過ごした今の君なら、なんとなくわかるかい?」

 今なら――。

「……わかります」

 ミナトの父親は、細い目をさらに細くした。

「ありがとう。最期を君に見られてしまったのは予定外だったが、息子は本懐を遂げた。これでよいのだ」

 アカリは、手元の魔本を見た。
 その焦げ茶色の表紙に、彼の爽やかで人懐っこい笑顔が浮かぶ。
 ふたたび目が熱くなり、鼻の奥が痛む。
 だがやはり、涙が出ることはなかった。

「君は意識を失い、今は病院で寝ている。ここにいる君は魂だけの状態。涙は流せぬはずだ。自分の体をよく見てごらん」

 心を読んだかのように、説明をしてくれた。
 アカリは言われたとおり、自身の体を見た。
 橙の照明でわかりづらかったが、露出している手の質感が、いつもと違う気がした。

 手のひらを、キャンドルの照明に向けた。
 キャンドルの光が、透けて見えた。
 今までまったく気づいていなかった。生身の体ではなかったのだ。

「このあと、君の意識は地上に戻ることになるが……」

 彼は、もともとよい姿勢を、さらに正した。

「これは父親としてのお願いだ。地上に戻ってからも、悲しんでくださるな。泣いてくださるな。息子を思ってくださるのであれば、息子のように、楽しんで生きていただきたい」

 気づいたら、アカリは魔本をギュッと抱きしめていた。

「その魔本、少しだけ見せてもらってもいいかな」

 その声に、アカリは一つうなずいた。

「これは、お返しします」

 そう言って、カウンターの上に魔本を差し出した。
 これは形見の品になる。自分が持っているべきではない。ずっと父親である彼が持っているべきだと思った。

 しかしミナトの父親はそれには答えず、微笑を浮かべるだけだった。
 そして置かれた魔本を手に取り、パラパラとめくった。

「これからの君には、そうだな……『生きていれば、きっとそのうちよいことはある』『どうせやるなら楽しまなければ損』――このあたりがぴったりかな。まあ、人間であれば真理だろう。頑張りたまえ」

 ――!

「その魔本、まさ
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