第三章 黒き天使
第12話 (やっぱり、最高だよ)
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間が本を発明したことによって生まれた」
またも顔をあげてしまうアカリを前に、彼は続けた。
「物事には、光と闇がある……。人間が生み出したものに、光と闇の両面がバランスよく存在するのであれば、魔など発生しえない。だが本はどうだ? 人間に圧倒的な光をもたらすが、闇などほとんどないだろう。利しかないというのは、大変に歪みのある発明だ。そのようなものを創り出してしまった以上、本来あるべき闇が魔となって、人間社会以外のどこかで生み出されることは避けられない。それがこの塔と我々だ」
内容だけで言うなら、にわかに信じがたいものかもしれない。
だが、アカリは思った。この人物、ミナトの父親は、嘘はついていない、と。
そしておそらく、この先に話されることもすべて事実なのだろう、とも。
「我々本魔は一定の年齢になると、定期的に人間と契約する必要がある。そして願いを叶え、その対価として魂を抜かなければ、消えてなくなってしまう生き物だ」
「――?」
どういうことだろうか?
ミナトは契約の対価に、魂を求めてこなかった。それどころか、「魂を差し出してもいい」という投げやりなこちらの言葉を咎めてきたくらいだった。
混乱するアカリだったが、説明は続く。
「人間の魂を抜いて魔本を生成する行為は、その人間から生命力を吸い取る行為でもあるのだ。本魔はそれ以外に生命力を供給するすべを持たない。一度も供給がない場合、十八歳の誕生日を迎えると同時に消滅する」
「……」
「だから、本魔は全員がこの塔の中にある学校に通い、人間との契約の仕方や、願いを叶えるための魔術を学んでいる。そして人間と最初の契約をし、その魂を魔本とすることで卒業、成人となる。それ以降は定期的に人間と契約し、魂を奪い続けなければならない。怠れば死ぬ」
「え、でも……ミナトは私に、対価として『本をたくさん読んでほしい』って」
アカリがそう言うと、彼は穏やかに微笑んだ。
「それは対価とはならない。我々がおこなう契約での対価は、契約する人間の魂以外にはありえない。それ以外はすべて契約違反となり、やはり消滅することになる」
アカリは驚いた。
人間が魔本になるのは、普通に死亡したときと、契約で強制的に魂を抜かれたときの二パターン。それはミナトから聞いていたが、実は後者が「本魔が生きるため」であることは知らされていなかった。
彼は続けた。
「対価として魂を抜く。それを疑問に思う者など、今までいなかったと思う。誰もが当然のように人間と契約し、願いを叶え、対価として人間の魂を抜き続けた。人間が食事をすることと同じで、その行為が正当なものかどうかなど、考えもしないことだった。ところが、息子だけはなぜか、自分が生きるために人間を殺すことを良しとしなかっ
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