第三章 黒き天使
第12話 (やっぱり、最高だよ)
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シャツ以外はすべて黒で統一されていた。
「君が、アカリくんだね」
固まっていたアカリに対し、名前を呼んできた。
驚くアカリ。その壮年男性に、見覚えなどなかった。
「そうですけど。どうして、私の名前を?」
「聞いていたからな」
先が天井を向くように槍を握り直しながらそう言うと、彼は続けた。
「私は本魔の代表者だ。ようこそ、我々の塔へ」
* * *
話しやすい部屋に案内しようと言われ、アカリは壮年男性――本魔の代表者についていった。
さっき出現した幽霊モンスターのような生物は、魔本になり損ねた人間の魂の一部であり、駆除対象。本魔の代表者は、歩きながらそう説明した。
「では、ここでいいかな。私が道楽でやっている店だ」
重そうな厚い灰色の扉を、彼が開ける。
そこは、それまでの無機質な景色とは違う、ダークブラウンのお洒落な空間だった。
L字カウンターや数個置かれた小さなテーブルは、高級感の漂うアンティーク風。ゆらめくキャンドルの照明は、落ち着いた木の内装を穏やかに照らしていた。
アカリはこれまで一度も行ったことはないが、おそらくこの店はバーなのだろうという推測はすることができた。
「今は誰もいないし、今日はおそらくもう誰も来ないだろう。安心してくれていい」
彼はアカリに対し、カウンター席に座るよう言った。
アカリはなんとなく、入り口に近いほうの席に座った。膝の上にミナトの魔本を置く。
淡いブルーのカクテルが目の前に置かれ、それをすすめられた。
だが、アカリはそれを味わおうという気にはならず、そのままうつむいていた。
「今お嬢さんが座っている席。息子はよくそこに座って、一人で本を読んでいた」
息子。
その言葉で、ビクンと体が反応した。顔をあげて彼を見た。
「まさか……」
「そうだ。私はミナトの父親でもある」
柔和な光だが、同時に威厳も感じる細い目。
ミナトとだいぶ違う。肌の色も白い。
もっとよく観察すれば、似ている部分は見つかるのかもしれない。
だが『息子』『父親』。その言葉は、今のアカリにはあまりにも鋭く胸に突き刺さりすぎた。彼の顔をじっと観察することなど、とてもできなかった。
「ミナトは、消えてしまいました……」
中途半端なところで視線をさまよわせ、そう言うのがやっとだった。
「全部わかっているから大丈夫だよ。息子の説明不足のせいで、悲しい思いをさせてしまって悪かったね」
彼――本魔の代表者でありミナトの父親は、穏やかに言った。
そして戸惑うアカリに対し、「どこから話すべきかな」と一度ぼやくようにつぶやいてから、話し始めた。
「この塔と我々は、人
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