第二章 旅は魔本とともに
第10話 喜んでもらえて、よかった
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「では戻りましょう」
案内人が静かな声で、帰り道のスタートを宣言する。
「事故が起きやすいのは、気が抜ける帰り道です。注意してくださ――んっ?」
「お? 揺れてる」
「わっ。結構大きいね」
「地震ですか……。今いる場所は狭くて頑丈なはずです。安心してください」
皮膚感覚などなくなっていたアカリの足ではあるが、今の揺れははっきりと感じた。少し大きめの地震だ。
そして揺れだけではない。
どこで鳴っているのかは不明だが、ガキッ、ミシッというような不吉な音も響いた。
揺れは、まもなく収まった。
案内人が「慌てずに外に出ましょう」と言い、三人はここまで来た道を引き返し始めた。
が、少し進んだところで非常事態に気づくことになった。
「塞がってますね……」
その案内人の指摘を待たずして、アカリにも見えた。
ちょうど狭くなっていたポイントに、大きながれき……というよりも岩が積もっており、人が通れるほどの隙間はなくなっていた。
案内人はがれきに近づき、両手で動かそうとする。
しかし、ボーリング玉よりもはるかに大きそうな岩たちが動く気配はない。
「これって、もしかして……」
アカリはそこで言葉をとめたが、どうやら閉じ込められたようだ。
「地震で簡単に崩れるようなところは一般公開しませんので、こんなことはないはずなんですが」
ヘッドライトの照明から外れていて表情が見えなくても、案内人の困惑はよく伝わってくる。
アカリとしても、こんなフィクションのような展開が本当にあるのかと思った。
「救助待ちになりそうですね。けっこう時間はかかりそうですが、待ちますか」
「うーん。ツイてないなあ」
アカリはついぼやいてしまった。
だが、そこで同伴の悪魔より意外な一言が入る。
「いやアカリ、これはツイてるぞ?」
「なんでよ」
「悪魔の肉体労働が見られるんだからな」
そう言うと、彼はレインコートをサッと脱ぎ、タンクトップ姿になった。
「契約の願い以外だと魔術は使えないから、力で解決するぜ」
がれきを動かす気だ。自信満々である。
ところが――。
「あっ、また地震だね」
ふたたび洞が揺れた。
先ほどの揺れまではいかないが、少しふらつくほどの大きさはある。
「この場所は先ほどよりも危険かもしれません」
案内人の不安そうな声。
この場所は先ほどとは違い、洞の形状が引き締まっていない。斜め上は不気味な闇だ。
今度は亀裂音が近いだけではない。がれきが降って水面を叩いていると思われる、さまざまな音階の音も聞こえてきた。
それは徐々に数を増し、こちらに近づいているようにも感じた。
「あー。こ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ