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黄泉ブックタワー
第二章 旅は魔本とともに
第10話 喜んでもらえて、よかった
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れ、たぶんヤバいやつだよね……」

 ああ、石降ってきてるのね。
 淡泊にそう思ったアカリだったが、その首に、レインコートの上から何かが巻かれ、勢いよく体ごと寄せられた。

「わっ」

 そして顔が弾力のあるものにぶつかった。
 その勢いに、思わず目をつぶった。

 一度バウンドしてから目を開けると、目の前にはミナトの引き締まった胸板があった。どうやら首に右腕を巻かれ、引き寄せられたようだ。
 見ると、彼の左腕のほうも、その先の手に魔本を持ったまま、案内人を手前に引き寄せていた。

 そのまま頭を上からねじ込むように押し下げられ、アカリと案内人はその場にしゃがみこむことに。

「別にヤバくねえよ。頼りになるのがここにいるだろ」

 ミナトはしゃがんだ二人に覆いかぶさるような姿勢で笑顔と言葉を降らせると、胸を一回叩いた。
 彼の背中には…………悪魔の羽が広げられている。

「え? ちょっと、危ないよ。そこまでしなくても」

 明らかに自身の体と羽で二人を守ろうとしている彼に対し、アカリは戸惑いの言葉を返した。

「悪魔的には契約外だろうけどよ、俺的にはこれも契約内だ。履行中の事故対応も仕事のうちだぜ。任せとけって」

 今度はアカリの頭頂部に、ゆるく畳まれていたミナトのレインコートが押しつけられた。即席の防災頭巾だ。

「ええとだな……落ち着いているのと、あきらめているのは全然違うぞ。アカリはもっと慌ててもいいと思うぜ」

 少し間があったので、おそらく魔本を見たのだろうと思われた。

「とりあえず二人は目でもつぶっとけ。すぐ収まるだろ」

 案内人はミナトの羽に驚きすぎていたのか、裏返った短い声を出し、ヘッドライトを下に向けた。
 アカリもそれにならう。指示以外のミナトの声をかすかに聞いたような気がしたが、言われたとおりに目をつぶっていた。

 比較的長い揺れだったが、それが収まると、アカリの頭に乗っていたレインコートが、ポンポンと二回叩かれた。
 アカリはそれを受け、立ち上がる。
 ミナトが親指を立てていた。

「あ、あなたは一体……」

 同じく立ち上がっていた案内人は、呆然とした顔でミナトを見ていた。
 悪魔の羽はすでにしまわれているが、案内人の脳裏には強烈に焼きついてしまったことだろう。

「兄ちゃん、悪いけど内緒で頼む! って、誰かに言っても信じないだろうし大丈夫かな?」

 そう言って、彼は笑いながら頭を掻いた。

「じゃあ、岩どかすの俺がやるぜ。アカリ、ちょっとこれを持っててくれ」
「え? あ、うん」

 差し出された魔本を、アカリは両手で受け取った。
 さすがに濡れていないわけがないと思っていたが、なぜかそんなことはまったくなかった。不
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