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黄泉ブックタワー
第二章 旅は魔本とともに
第8話 自分の手でよければ、いくらでも
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効果ありそうか? 前も言ったけど、俺清潔だし、そのへんは心配しなくていいぞ」
「それは全然心配してないよ」

 彼は「へへ」と満足そうな笑い声を出した。
 アカリは懐かしくも温かい感情に包まれていた。それこそ、幼少のころの記憶のままに。

 それは、なぜだろう? と考えた。
 仰向けのまま横を確認する。

 彼の顔は、祖父には全然似ていない。その乾いた手の感触も、遠い記憶にある祖父のものには似ていないような気がする。
 では、彼の声のせいだろうか? 顔や手の感触は全然違うにしても、声については、祖父のものをずっと若くすればと考えた場合、似ていないこともないのかもしれない。

 そう真剣に考えざるをえないくらい、彼の手は……いや、彼そのものがどこか懐かしいとすら思えた。それくらいの安心感があった。

「ん? どうした?」

 ジロジロ見すぎたのか、怪しく思われたようだ。

「なんでもない。明後日からまたいつもの毎日かー、やだなーって思っただけ」

 ごまかした。
 とはいえ、これも本音だ。この安心サポートが受けられるのは、今回の旅限定だ。
 それは惜しい。大変に惜しい。

「アカリ。嫌々やってるうちはいい結果が出ないぞ。いい結果が出ないと余計に嫌になるから、悪循環だ」

 彼はサッとガイドブックから魔本に持ち替え、そんなことを言う。得意の魔本読み上げだ。もちろんアカリはハイハイとスルーする。

「んで、どうなんだ? 手の効果は期待できそうか? 感想を聞かせてくれ」
「うん。なんか落ち着いた。ありがとう」
「よーし。じゃあダメ押しでこれもいこうか」

 ミナトはアカリの右手に重ねていた手を外すと、一度起き上がり、リュックから何か小さいものを出した。

 それはふわっとアカリの両目を覆う。
 完全な暗闇になると同時に、両耳にミナトの指が触れた。紐のようなものがかけられたようだ。

「これ、アイマスクだよね? なんで持ってきてるの」
「ストレスってやつは旅行前に本でいちおう調べてたんだ。ちゃんと理解はできなかったけど、夜に眠れなくなるってのは書いてあった。だから持ってきてた」

「……なんかあんた、今日ずっと過剰サービスというか。嫌々ついてきたわりにはものすごい親切だよね。そんなに頑張らなくてもいいのに」
「行く以上は同伴者として頑張るぞ? ええと……時間はすべての人間に平等に与えられるが、どのように過ごしても同じ量を失ってしまう恐ろしい資源だ。だから頑張ったほうがいいんだよ」
「また魔本をカンニングしたなー? たまには見ないで自分の言葉で言ったら…………ん、ちょっと待った」

 アカリは遅ればせながら、一つ不思議なことに気づいた。

「そういえば、ストレスにやられてるなんて
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