第二章 旅は魔本とともに
第6話 頑張ることで、少しでも喜んでもらえるなら
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行く理由は、昔祖父と一緒にここに来たとき、鍾乳洞に入る前に見晴らしのよい場所に行っていたような記憶が残っていたからである。
車がすれ違えないほどの狭い登り道を抜けると、そこは山の頂というよりも、峠のような、平らでのどかなところだった。
ミナトの説明によれば、この山の名称は仙人平。名前のとおりということなのだろう。
道の終点にあった広い駐車場には、観光客と思われる車が数台とまっていた。
車から降りたアカリたちは、ゆるやかな斜面に設置されていた大きな展望台へと向かった。
「うわあ。なんか、何もかもが、なだらかだね」
展望台からの眺望も、やはり穏やかで優しい。夏空の下の稜線は切り立つことなく、柔らかなうねりが続いていた。
「でも不思議。なだらかなんだけど、どうしてか元気をもらえる気がする」
その手前に広がっている濃い緑や、流れている川のおかげだろうか。けっしてパワーを感じない眺めではなく、活力にもあふれている気がした。
――この感じ、少し記憶にあるような気がする。
アカリはそう思った。
昔の記憶が呼び起こされている感覚が、たしかにあった。
この展望台で、祖父が自分のすぐ右側に立っていて。その内容まではさすがに思い出せないが、景色を見ながら何かを話してくれていたような……。
……まあ、今右側に立っているのは祖父ではなく、得体の知れない悪魔さんなわけだけれども。
「この景色は隆起準平原、だな」
相変わらず魔本とガイドブックの両方を持ったままのミナトが、ガイドブックのほうを開きながら、そんなことを言ってくる。
「何それ」
「よーし、説明してやる」
「あんた、まるでガイドさんだよね。一度も来たことないくせに」
その突っ込みにもめげず、ミナトはガイドブックをチラチラ見ながら、説明を進めた。
河川の浸食――水のエネルギーによって作られた山と谷の地形は、その浸食がさらに進むと、最終的には『準平原』と呼ばれる地形となる。
準平原は平原と残丘が残るだけのなだらかな地であり、高度も海面に近づいているため、水の持つエネルギーも弱くなり、それ以上の地形の発達はなくなる。
つまり終わった地形≠ネのだ。
だがその準平原も、地殻変動などで隆起して高度が復活すれば、そこに流れる水は再びエネルギーを持つようになり、それ以降は浸食が復活する。
この地形の若返りを『回春』といい、隆起した準平原を『隆起準平原』という。
ミナトの説明は、かなりたどたどしくはあった。
しかしアカリは前方を眺めながら、最後まで聞いた。
きちんと理解はできる話だった。
眼前の景色が優しくも力を感じるのは、この高原が若返りを果たした準平
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