誕生
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母さん。クシナさんとミナトさんも心配そうに私を見てくれてる。
お母さんの翠色の瞳に、赤ちゃんの泣き腫らした顔が映るけど、これは私なんだよね。
あぁ。これは見ていて痛々しい。
ぐすん、と鼻水をすする私に、お父さんが柔らかな布で頬や口元を拭ってくれる。やっぱり赤ちゃん。言葉で伝える事は難しい。
けど、お母さんもお父さんも神妙な表情を浮かべたまま、二人に向かって一回だけ頷く。意味深なやりとりだったけど、何故か私は睡魔に抗う事が出来ず、泣き腫らして腫れぼったい瞼をゆっくりと閉じながら、ギュッとお母さんの服を掴んだ。
力を込め過ぎて震えだした小さな手を、お父さんとお母さんが優しく握ってくれた感触に安心しながら、私の意識は完全に眠りへと落ちていく。
何故か伝わったと、そう思えてしまったのだ。
天華が私の体の奥底で、くぅん、と一回だけ鳴いたんだけど、この時の私は疲れ果てていてそれには気付けなかった。
けれど無意識に小さな手を伸ばして、天華の身体を包み込む。胎児時代に培われた、天華に関しての条件反射。頭で考えるよりも先に身体が動く癖。
ぎゅうぅぅ、と無意識に天華の身体を抱きしめ、今度こそ私の意識は完全に途絶えたのだった。
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