第二章 旅は魔本とともに
第5話 実は、楽しみだから
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だって魔本と一緒だぞ」
「あっそ」
「こら、流さないでちゃんと聞けって」
彼は魔本に持ち替えると、高速でめくりだす。
「ええとだな……。三流は人の話を聞かない。二流は人の話を聞く。一流は人の話を聞いて実行する。超一流は人の話を聞いて工夫する――。どうやら聞かないと三流になるらしいぞ?」
「三流でけっこうですよーだ。とりあえず、その本が読みたければ貸してあげるから、今日はもう帰って。これから私、お風呂入るから」
「入ってきたらいいんじゃねえの? 俺はこの本読んでるから」
「え? そっちの塔では女性の風呂上がりすぐに立ち会ってもいいんだ? それともあんたが変態なだけ?」
「変態じゃねーよ」
否定しながら笑うと、ミナトはまた魔本を高速でめくる。
「あ、なるほど。たしかにそういうのはよくないみたいだな。悪い」
頭を掻きながら、素直に謝罪してきた。
「まあ、そういうことなら今日は帰る。お言葉に甘えてこの本は借りるぜ」
最後はまた爽やかな笑顔で締めくくると、ミナトは窓を開け、闇夜へと飛び去っていった。
翌日夜。
前日よりもだいぶ加減した勢いで窓が叩かれた。
「よお」
「出た……」
またミナトである。
時間は昨日よりも遅い。アカリはもう食事も風呂も済ませ、部屋でゆっくりしていたところだった。
彼の右手には昨日借りていった本。左手の魔本はまたチェンジしてきたのか、緑色をしていた。
前日の反省点を生かして履いてきたのであろうサンダルを脱ぐと、彼は中に入り込んできた。
「あんた暇なの? また本借りにきたの?」
「それもあるんだけどよ。今日はまず、この家の中を探検してきてもいいか? お前以外の人間には見えないように姿を消すからさ」
「は? 気持ち悪いんだけど。なんで?」
彼の表情はそれまでと変わらず、悪魔の一種だとは信じがたいくらい無邪気だった。それだけに、頼み事の気持ち悪さとのギャップが凄い。
「せっかくだし、全部見たいんだよ。ま、駄目だって言われても見るけどな!」
「きもっ」
探検に出かけた彼は、思っていたよりも長い時間戻ってこなかった。
アカリはその間、ノートパソコンで適当にインターネットニュースを閲覧していたが、いったい彼はうちの中で何を見ているのだろう? と徐々に不審に思い始めた。
一度様子を見に行こうかと立ち上がったそのとき、ドアがノックされた。
「はいどうぞ」
入ってきたのは、もちろんミナトだ。
「おい、アカリ」
「おかえりなさい、気持ち悪い悪魔さん」
適当に迎えの言葉を投げてから、アカリは気づいた。
先ほどとはうって変わって、彼の表情はややシリアスで、怪訝さを浮かべてい
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