第一章 それは秋葉原にそびえ立つ魔本の塔
第3話 なんで、いないんだ?
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「あ?」
アカリが願いを言うと、元々パッチリしていた青年の瞳が、さらに大きく見開かれた。
「『あ?』って何よ。具体的な願い事なら叶えてくれるんでしょ? 私のおじいちゃんを生き返らせて」
「そんなの無理に決まってるだろ」
「はあ? 叶えるって言ったのはそっちでしょ?」
「言ったけどよ……。悪魔の魔術はいろいろできるけど、人を生き返らせるのは無理だぞ」
アカリはため息をついた。
「役立たずだね。話にならない」
「なんでだよ」
「期待させてから落とすとか、あんた最低だわ」
「いや、俺は最高だぞ?」
「きもっ。どう考えても最低です」
「え? だってよ、悪魔が死人を生き返らせたとか聞いたことあるか? あってもゾンビとかじゃないのか?」
「なるほど。それはあんたの言うことが正しいかもね。さようなら」
「おい、ちょっと待てってば」
アカリが自分のトレーだけ持って席を立とうとすると、青年が慌ててそのトレーを机に押し戻してきた。
「何? もうあんたに用はありません」
「俺があるんだよ。ていうかよ。人間って、誰でも金がほしいとか物がほしいとか、そういう願いがいつもあるって聞いたぞ?」
「いや、本当にないんだって。なんか人間に偏見持ってない?」
「ええ? そういうもんだと教わったんだけどな。俺、もしかして特別な人間に当たっちまったかな」
まいったなという感じで、青年は真っ黒な髪に手をやった。
「ま、とりあえず。こうやって姿を見せたんだから、何かお願いしてくれよ。俺にもメンツってもんがあるからな」
「手ぶらでは帰れませんってことかー。悪い訪問販売を教える学校に行ってるの?」
「違うっての。悪魔と人間は契約するもんだろ。このまま何もしないで帰れるかよ」
契約。
学生の頃であれば、アカリがその言葉に警戒することはなかったかもしれない。
だが、社会人となった今では違う。
「ん。契約ってことは、対価を取るの?」
「もちろんそうだよ。そうしないと契約にならないだろ」
「もしかして、魂を抜くとか?」
「普通は抜くぞ。抜いてその魂を魔本にする」
「何その不利な契約。でもあんたは抜かないんだ?」
「俺は出血大サービスで抜かないことにしたんだ。お前はラッキーだ」
「よくわかんないね……。でも私は別に魂抜かれてもいいって思ってるくらいだけど? 痛くないんでしょ?」
青年はその回答に一瞬固まると、真顔になった。
「アカリ、あんまりそういうことを言うもんじゃないぜ?」
そう言って手元の分厚い本をパラパラとめくる。
「えーっと。この世界ではすべての人が主人公だ。主人公なんだから簡単に死んじゃだめだろ?」
「……今の言葉がその本に入ってたの?」
「そうだぞ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ