酔客達のよもやま話
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注文してきた『アレ』はここからが違う。俺はコンロに掛けられていた鍋から、茶色いドロリとした物をカツにかける。途端に広がるスパイスの香り……そう、かけたのはカレーだ。カツカレーの飯抜きとでもいうべきこのメニューだが、カレーのかかったカツって奴は意外とビールのツマミになるんだ。
「ハイよ、『豚カツのカレーがけ』」
「うむ」
長門は俺から皿を引ったくるように受け取ると、まずは端っこの部分を箸でつまんでかぶりつく。サクッ、といい音がする。唇に付いたカレーを舐め取りながら左手がビールジョッキに伸びる。カツとカレーの脂っぽさを洗い流すように、ビールがスルスルと流し込まれる。今度は千切りキャベツをカレーに絡ませ、カツとカレーも一緒に頬張る。サクサクというカツの歯応えに、シャキシャキのキャベツが加わる。そこにカレーの辛さが混じり合い、カレーライスとは違う別の料理のような顔を覗かせる。そこに再びビールを飲めば、ジョッキからは既に中身が消え失せていた。
「提督、すまんがお代わりを貰えるか?」
あいよ。ところでそっちの酔っ払い連中はどうした?黙り込んで。
「いやぁ、あんまりにも長門が美味そうに食べるモンだから……」
「ついつい目を奪われて……ねぇ?」
お前らさっきまで唐揚げやらフライやらがビールに合う揚げ物最強だって言ってなかったか?
「とりあえず今日の所は豚カツが最強ってことで!」
随分都合がいいなぁオイ。思わず苦笑いが浮かぶ。
「ってなワケで、長門とおんなじ奴を大至急ね!」
「あっ、ずりぃ!提督、こっちにも!」
「俺も!」「私も!」と続々声が上がる。何とも脈絡のない論戦の決着だ。ま、酔っ払いなんてこんなもんか。俺は鼻で笑いながら、包丁を手に取った。
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