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黄泉ブックタワー
第一章 それは秋葉原にそびえ立つ魔本の塔
第2話 きっと、いい人間だ
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あまり希望していなかった総務課だった。
 人間関係もダメ、やっている仕事も希望と違う。そんな状況で楽しいわけがなく、会社員生活一年目は、すぐに苦痛なものとなった。

 そして、とどめを刺されるような出来事が起きた。
 祖父が、六月に急死したのである。

 心の支えになっていた人がいなくなったからだろうか。暑くなってきたころには、アカリは徐々に体調を崩すようになっていった。寝つきの悪い日が増えてきて、体が重く、気分も悪いことが多くなっていった。
 両親は普段相談できる相手ではなかったが、体調があまりよくないことは一度言った。

「そんなのはただの甘えだろう。たるんでいる証拠だ」

 しかし、そのように一蹴されてしまった。
 両親の頭の中には、優秀な成績を修め、名の知れている大学に進学し、上場企業に就職することが一番と考えている節があった。
 その意味では、現在のアカリはおそらく両親の求めていたスペックを満たしている。敷いたレールから外れることは許さん――そんな圧力を感じた。

「生きていれば、きっとそのうちよいことはある」

 生前の祖父は常日頃そうも言っていたが、少なくとも今のところはない=B
 この先にあるという希望も持てない。

 せめて、祖父のような、愚痴を言える相手が身近にいてくれれば……また気分も違うのかもしれないが。

 ……。

 ん? ちょっと待った。
 そうか――。

「おいアカリ、どうした? ボーっとして。ちゃんと考えてくれてるのか?」

 回想、そして思考が終わるのと、そう話しかけられたタイミングが同時だった。

「うん。考えてたよ。願い事、決まった」
「お! そうか。何にする?」

 身を乗り出すように聞いてきた青年に、アカリは言った。

「私のおじいちゃんを、生き返らせてよ」
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