疾走編
第三十二話 それぞれの任務
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カ。そして大尉、彼女を幸せにしてやってくれ」
そう言って、テオドールおじさんは俺達のグラスにワインを注いでくれた。エリカが生まれた年のワインだ。オーディン産にはビックリだけど、発想は陳腐と言えば陳腐だろう。でも実際にやってもらえるとなると、感激はひとしおだよな。
「泣くなよエリカ。せっかくテオドールさんが用意してくれてたんだぞ?」
「だって…嬉しくて」
そうだよな、誰だってこんな風に祝って貰えたら嬉しいよな。でもそれをぶち壊す奴等がいる。
「テオドールさん、有り難うございます。まさか旅先でこんな風に祝って貰えるとは思いませんでした。必ずエリカを幸せにします」
「私にとっても可愛い姪だ。よろしく頼むよ、大尉」
「はい、必ず。で、ですね、ちょっと申し訳ないのですが、あのテーブルの二人にもワインを一本用意してもらえませんか?」
「知り合いなのかい?」
「ええ、彼等はフェザーンに出向中の身なのです。居合わせたのはたまたまでしょうが…私達の旅行の事を知っているので遠慮して話しかけてこないんだと思います。ああ、このワインじゃなくて、一番安いやつで結構です。これを飲ませるなんて勿体ない…それについてはちゃんとお代は払いますので」
「ハハハ、祝い事なんだ、代金なんか気にしなくていいよ。わかった、用意させよう」
再びテオドールおじさんはウェイターに目配せした。おじさんは近付いて来たウェイターの耳元に顔を寄せる。頷くとウェイターはワインセラーの方に向かっていった。
「彼等も遠慮しなくてもいいのにな。大尉、同盟の軍人さんは皆ああなのかい?」
「テオドールさん、弁務官府のクラブならともかく、民間の方の営業するレストランで馬鹿騒ぎする訳にもいきません。それにここはフェザーンです。同盟に対する印象が悪くなります」
「成る程。軍人さんも大変だね」
ウェイターが二人に近寄った。ワインを注がれ可哀想なほど慌てている。テオドールさんやエリカには恥ずかしがってるように見えるだろうな。誰かは知らんがほら、グラスを掲げてくれよ、お邪魔虫め。
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