8月
第93話『到着、一悶着』
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つ巡っていると、ふとそんな声が聞こえてきた。
辺りを見回すと、全体的に暗い色調で整えられた店の中に、眼帯と髭がよく目立つ、ソフトモヒカンヘアのおじさんが手を挙げている。
「もうボウズはやめてくれよ、マーさん。俺も来年から高校生なんだぜ?」
「はっ、高校生だろうと俺から見ればボウズなんだよ」
それに応えたのは終夜。どうやら2人は知り合いなようだ。
とはいえ、どうやったらこんないかつい人と知り合うのだろうか。去年の魔導祭でも会ったとか?
「それより、この前売った石はどうだったよ?」
「え!? あぁ、その話ね……うん、まぁ凄かったよ、うん」
「何だぁ? そんなに慌てちまって」
突然のマーさんと呼ばれる男性の一言で、終夜が動揺し始めた。焦りながら、ちらちらとこちらの様子を窺っている。
石? 一体何のことだろう……って!
「終夜、あんたまさかあの石を買ったのは……」
「い、いや、確かに夢渡石はマーさんから買ったものだけどよ! でもいいじゃねぇか! あれのおかげで、今こうして結月という素敵な仲間にも出会えた訳だし?! それならウン千万円なんて安いもんだろ?!」
「それとこれとは話が違うわよ! このアホ!!」
終夜の必死な弁明に、緋翼がこれまでの中でも一際大きい声で怒鳴る。そのあまりの勢いに、晴登たちまで思わず気圧されてしまった。
それにしてもまさか、異世界へ渡るために使ったあの石が、この人から買った物だとは。値段も値段だが、それ以上にマーさんという人物の方が気になってしまう。何者なんだこの人は。
「まぁまぁそう怒んなよ、チビの嬢ちゃん」
「チビ言うな! 思い出したわ。あんた去年も終夜に声かけてたでしょ。何してんのか気になってたけど、まさか中学生に高額な物を売りつけてたなんて……」
「はっはっは。こっちは商売やってんだ。金さえ払ってくれるなら、子供も大人も等しくお客様なんだよ。ま、さすがにあの額を払うとは思ってなかったけどな……」
マーさんが堂々とした態度で語り始めたかと思ったら、最後の方は何だかビビってる感じだった。そりゃ確かに、一介の中学生が何千万円を支払ったとなれば、驚かない訳がない。
「ところで、その結月ってのはそこの銀髪の娘かい?」
「はい、そうですが……」
「──つまり、異世界から人を連れて来たってのか?」
突然、マーさんの声色が低くなった。そして睨みつけるように結月を見つめる。彼女はその視線に表情を強ばらせた。
その急な態度の変化に気圧され、晴登たちも押し黙ってしまう。
「本来、この世界と異世界は交わらぬもの。当然、お互いに不可侵不干渉が暗黙のルールだ。けれど
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