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おぢばにおかえり
第六十話 朝早くからその十二

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「だから別にね」
「普通だっていうんですね」
「起きることはね、けれどお家に来ることは」
「違いますか?」
「そうでしょ、普通八時前に人のお家に来ることは」
 阿波野君を迎えながら言いました。
「ないでしょ、まあとにかくあがって」
「お邪魔しますね」
「さっき言ったじゃない」
「そうでしたか?」
「ええ、お邪魔しますって」
「こうしたことはちゃんとしたいですから」
 阿波野君は笑顔ですが真面目なお顔で言いました。
「僕図々しいの嫌いですから」
「そう?かなり図々しいわよ」
「そうですか?」
「私から見たらね」
 ただ詰所の人達もうちの家族も阿波野君みたいに謙虚な子はそうそういないと言います。どういう訳かです。
「そうよ」
「そうでしょうか」
「そこ気をつけてね」
「そうさせてもらいます」
「そこは素直なのね」
「はい、やっぱり人間素直ですね」
「そこはね」
 私はお家にあがった阿波野君にお話しました。
「あと謙虚であれね」
「遠慮してですね」
 そうしてというのです。
「何事も慎んで」
「そうしないと駄目だけれど」
「僕よくそうした人だって言われますけれど」
「それが信じられないわ」
 阿波野君をじっと見て言いました。
「本当に」
「そうですか」
「私にだけかしら」
「そうかも知れないですね」
「じゃあ何で私だけなのよ」
 このことがわかりませんでした。
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