間章2 解放軍の光と影
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「この虫だらけの穀物が銅貨10枚!?1週間前はもっと質のいいやつがこの半額だったじゃないか!!」
「仕方ないだろう!何故か帝都のあちこちの商会や問屋が潰れちまって供給が追いつかないんだ!それに質のいいやつは片っ端から軍や貴族が持っていきやがる!」
「なぁ、頼むよ。これじゃあ生活できないんだ。安くしてくれ」
「いくらお得意さんでも無理だ。俺達だって売らなきゃ生活できん」
通りにある店では店主と客が争っていた。確かに店の主人の言うとおり、ここのところ帝都にある商会や問屋が数軒、潰れていた。貴族や元老院議員の御用商人達も何人も家業を畳んだ。
実はこの現象にキケロ卿は心当たりがあった。というより自ら関わっていた。
遡ること数週間前、行商人を名乗る男が自身の屋敷を訪れ、象牙や宝石などの装飾品、酒などの嗜好品、はたまた鮮やかな刀身を持つ刀剣などを見せてきた。
どれもこれも貴族出身であるはずの自分が今まで見たこともない位、高品質で美しく、それまでの御用商人と関係を持つのが馬鹿らしくなった。
始めは美術品、次に嗜好品と徐々に御用商人との取引を減らしていくうち、とうとう完全に手を切ることになってしまった。それから間もなく、御用商人の商会は顧客不足で潰れたらしかった。
どうも行商人は自分だけでなく、他の議員や貴族の元にも訪れ、御用商人達から顧客を奪って回っていたようだ。
しかし、そんなこと自分には関係ない。自分の満足のいく商品を卸せなかった御用商人達の方が悪いのだ。
そう思っていたのだが……。
その影響がこんな平民の店に現れるとは……。本来、栄えある帝国の元老院議員である自分がわざわざ平民の生活にまで気を使う必要はない……がにしても自分のせいで彼らが苦しんでいるのならば心が痛む。
せめて御用商人達も"謎の商人達"に負けず劣らず高品質な商品を仕入れることができればここまでの事態にはなっていなかっただろう。
自分も彼ら、謎の商人がこのような品々をどこから入手しているのか気になるところではあったが聞く度に「企業秘密です」とはぐらかされてしまい、いつしか聞く気すら無くした。
「おら!どけどけぇい!!」
突如、豪華な服装の男が他の客との間にズカズカと割り込んで貨幣が大量に入った袋を投げるように店主に渡した。
「その穀物は俺がもらった!見ての通り、金ならたんまりある!さあ売ってくんな」
彼はキケロ卿の顔見知りの奴隷商人である。顔見知りといっても数人程、彼から奴隷を買っただけの仲だが……。
どうも彼の取り扱っている奴隷が高額で、それも大量に売れているらしく最近では贅沢三昧な生活を送っているようだった
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