間章2 解放軍の光と影
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界征服』が至上命題であるので帝国に対して一歩も譲るつもりはないのだが。
一方、講話派議員達は「イタリカを奪還すべきだ!」、「帝国の名誉にかけて講話はできない!」と主戦派がずっとオウムのように具体的な方法もないまま繰り返し叫んでいるのを聞いて飽き飽きしていた。
勿論、主戦派の言うとおり、穀倉地帯のイタリカを占領されているということは敵にこちらの胃袋を握られているということであるため、奪還せよというのはもっともな意見である。同都市の占領は帝国の威信に泥を塗る行為でもあるからすぐに奪還すべきというのも分かる。
しかし、帝国軍は壊滅寸前、焦土作戦による税収の著しい低下、行き過ぎた徴兵による治安の悪化及び盗賊の台頭、周辺国からの憎悪。おまけに敵に傷一つ与えられていない。
それが今の帝国の現状だった。
見ての通り、帝国は国家としては末期状態であり、このままでは戦争に関係なく帝国という国家が内側から滅びかねなかった。
(速やかに講和して立て直しを行わなければ帝国が滅ぶ!!!)
講和派議員達はこの現状を冷静に見抜いており、焦っていた。
主戦派の議員達や軍人達を少しでも目を覚まさせようと必死に説得しようとするも彼らは依然として受け入れようとしない。
そんな中で突然、皇帝であるモルトが意を決したように立ち上がった。
さっきまで罵り合っていた主戦派と講話派の議員も口を噤んで静かになった。
「まだ講話は時期尚早だ。講話するにしてもせめて敵に打撃を与えてからにしようではないか」
モルトはそう言うと一方的に元老院を閉会した。その余りの横暴さに講話派議員達から抗議の声が上がるがすぐに周囲の主戦派議員達が黙らせたことで不満を残しながらも議場は落着きを取り戻し、講和派議員達を残して次々と退室していった。
「全く!何なんだ!さっきの議会は!?本当に帝国の将来を憂いているのか!?」
先程の元老院での出来事に不満をこぼしながら昼間の帝都を散歩しているのは講話派議員であるキケロ卿である。彼は一方的に元老院を閉会した皇帝、そして現状を見ようとしない主戦派議員達に憤慨していた。
彼がこんな昼間から散歩しながら思索にふけっているのも余りの怒りに中々、落着きを取り戻せず気分転換に帝都内を散歩することにしたからだった。
今日も帝都では青空の下で小鳥が囀り、吟遊詩人が詩を歌う。傍から見ればいつもの覇権国家たる帝国の帝都の日常であり、とても滅亡に向けて走っているようには見えない。だがキケロ卿には目に映る物すべてが空虚に、色あせて見えていた。
「なんだこりゃ!!!」
突然、白昼の目利き通りに男が騒ぎ立てる声がし、キケロ卿は思わず声のした方を見る。何事だろうか?
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