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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
胸弾むアタシは、名前をもらう
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部は彼女を消さず、心の中に残しておいたのだ。
それに
「もしあなたが表に出たとして、1番にあなたは葵様を消すつもりでしょう?」
【へぇ…バレてるんだ。】
源葵という存在に、この裏の人格は必要不可欠。
陰と陽があるように、表があるから裏がある。どちらか1つなんて有り得ない。
「それと…どちらも葵様ですと呼ぶのに少し不便ですね。」
【別にいいじゃん。アタシはアタシだもん。】
「なので、お名前を考えてきました。」
【…へ?】
裏の葵の様子は分からないけど、きっと今きょとんとした拍子抜けしたような顔をしているのは確かだろう。
【一応…聞いとくよ。】
「菫…というのはどうでしょう?」
【す…すみれ?】
まだ近野のどかから花を貰っていない頃の話だ、
先日、なんの前触れもなく中庭にいきなり菫の花が咲いていた。
種を植えた記憶はない。だが確かに菫は咲いている。
その事が頭に残っており、紫式部はそのまま彼女に菫と名付けることにした、
【すみれ…すみれかぁ…それって花の名前だよね?】
「はい。葵様もおそらく花からとられた名前だと思いましたので、あなたにも花の名前を付けようかと。」
【名前かぁ…アタシ…香子から名前もらっちゃったんだぁ!】
それは予想以上の効果だった。
名前をもらう。それ即ち自己の確立である。
菫という名前をもらったその瞬間から、彼女は葵の裏人格ではなくなり、葵の中に潜む菫という人物となった。
そう、立派な"個"としての証をもらったのだ。
【菫!今日からアタシは菫!香子からもらった大事な名前!】
それが大好きな紫式部からもらったのなら、尚更嬉しいのである。
【いいよ、お礼に頼み事…聞いてあげる。】
すっかり気を良くした裏の葵…もとい菫は最初は断っていた頼み事というのを聞いてくれることになった。
物事をスムーズに進めたいから、というのもあったが紫式部自身もまた、裏の葵という存在にちゃんとした名前を与えたいというのも確かな思いであった。
「ええ、あなたの力を見込んで、あなたにしかできないことを是非とも頼みたいのです。」
【なになに!?聞かせて聞かせて!】
?
「香子にも手に負えない状況になった時…葵を守って欲しい。」
あの日の夜、交わされた約束を呟く"菫"
真っ赤な眼光。
そう、今の葵は葵ではない。
"菫"だ。
「な、なんだこいつ…!いきなり雰囲気が」
解き放たれた獣は、まず1人の隊員に襲いかかった。
「まずは1匹ィッ!」
飛びかかり、両手でヘルメットをがっちり掴むとそのままぐるりと力任せに回した。
隊員の首はヘルメットと共に明らかにやばげな音を立て180度回転。
それから力なく倒れた。
「…!
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