暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第49話:奏にとっての颯人
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な顔をしていた。当然だろう。奏の言い分では、颯人が居れば奏は高く飛べると言う事なのだ。自分の居場所を取られたようで、良い気分がする筈がない。

 そんな翼の変化に気付かない奏ではない。彼女が不貞腐れるだろうことは予想していたので、奏はそっぽを向いた翼に後ろから抱き着いた。

「つ〜ばさ!」
「わっ! か、奏?」
「拗ねるな拗ねるな。大丈夫、翼もアタシにとって大事なパートナーだよ! 颯人だけ居ればいい訳じゃない。翼とアタシ、2人揃ってのツヴァイウィングだ。一緒に羽ばたく翼が居てくれるから颯人っていう追い風を受けて高く飛べるんだよ。だから安心しろって」
「安心って…………そんなんじゃない!?」
「じゃあ何で拗ねてたのさ?」
「何でって…………知らない!」

 機嫌を損ねてそっぽを向いてしまった翼に、奏は心の底から笑い響と未来は翼をどう宥めようかと右往左往する。

 ヘソを曲げてしまった翼だったが、響と未来の言葉と気が済んだ奏の謝罪によって機嫌を直した。懸命に彼女を宥めようとした少女2人は安堵に胸を撫で下ろす。

 場が落ち着いたのを見てか、奏と翼は荷物からそれぞれ一枚のチケットを取り出し響と未来に渡した。それは翼の負傷によって中止になったライブから久しく行われていなかった、ツヴァイウィングの出演するライブのチケットであった。

「今日はありがとうな、2人とも。これ、アタシ達からのお礼だ」
「ささやかな物だが。今日はありがとう」
「これ、復帰ステージ!」
「あれ? 奏さん、この場所って……」

 感激しつつ、場所と日時を確認しようとした響はそこに書かれていた会場に目を丸くした。

 そこに書かれていたのは、2年前の…………惨劇の地とも言えるライブ会場であった。運命が決定的に変わった、彼女達にとって曰く付きの場所である。

「あ〜……響にとっちゃ辛い場所、か」

 まだあの頃の事を引き摺っているかと、奏と翼は少し後悔しかけた。
 しかし次の瞬間響が見せたのは、満面の笑みであった。

「奏さん翼さん、ありがとうございます!」
「え、お?」
「響?」

 まさかの反応に困惑する3人。しかし響はそれを特に気にする事も無く言葉を続けた。

「また奏さん達のライブが見れるなんて、感激です! 私、絶対に行きますね!」

 どうやら奏達の心配は杞憂だったらしい。響は既に過去を乗り越えている。その要因の一端は間違いなく奏の存在だったが、この時の彼女はそれに気付かず純粋に逞しい後輩の姿に安堵し眩しそうに目を細めたのだった。




***




 日が沈んできたのを見て、高台を下り各々帰路につく4人。響・未来と別れて翼と共にマンションに帰ってきていた。

「んじゃ翼、お疲れ」

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