出会い
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誰かが優しく擦ってくれる。
直接じゃないけど、それでも撫でられてるってわかる感触。
慈しむように優しく優しく。
身体の自由はきかないし、目もあかない。けれど、愛されてるって確証だけはあって、その優しい温もりと声に包まれながらも私は、毎日何かの中をたゆたうという日々を過ごしていた。
声は、女の人の声。
時々男の人の声も聞こえるけれど、女の人よりも頻度は落ちる。でも、男の人も私が大好きでたまらない。女の人も大好きだっていう気持ちを垂れ流し状態。思わず何処かのバカップルか? って苦笑いを浮かべてしまうけど、こういう雰囲気は嫌いじゃない。
どのぐらい経ったのかな。
どうにもこうにも、時間の感覚がすっかりと鈍り果てた私は、今日も温かな中でその温もりと優しい感覚を十分に堪能していた。
いつもと違ったのは、女の人と男の人以外の存在が近くにいるって事。多分、この気配は前々から感じていたんだけど、気にしてなかったっていうのが正解。
まだ、あんまり手が動かないんだよね。
最期の時と違って、あんな管だらけの腕じゃなくて、純粋に動きが鈍いなって感じの動かなさ。不快じゃないから気にしてないんだけど。
というか、一回死んでみればわかる。
少しの事じゃ動じないのですよ。
けれどその小さな気配に心引かれて、私は一生懸命指先を伸ばしてみた。
例え届かなかったとしても、自分的には大がつく快挙的な事をやってのけている。つもりになってる。
うーん。しかし、こうしてみると動かないっていう事はやっぱり不便だ。
ふごふごと間抜けな声をあげながら(つもり)、私は日々小さな気配に近付こうと努力してみた。
すると、女の人が驚いた気配がした。
ん? 驚き??
「アナタ。動いたわ。嵐誓が今動いたのよ」
「あぁ、本当だ。俺たちの可愛い赤ちゃん。元気に育ってくれよ」
へぇ。赤ちゃんが動いたんだぁ。
そりゃ良かったぁ。
……………………………。
長い、長い沈黙の後、漸く私は首を傾げるに至った。
いや、だってさ。
女の人のその言葉って、超がつく程の重要さを含んでなかった?
いやいやいやいや。
決して私が鈍いわけじゃなくてね? 本当に鈍いんじゃなくてね?
まっさか、記憶持って生まれ変わって胎児をやってるなんて思わないって。
けれど、そう考えれば全てに納得がいく。
温かでぬるま湯に浸かっているような安心できる場所。
私を愛してくれている女の人と男の人。ちなみに、この間も相思相愛と見た。
で、開けられない目と動かない身体。
胎児そのものですよねー。
あっはっは。今更だけど。
で、漸く自分の置かれて
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