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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
復興の国〜エル・ファシル共和国にて〜(上)
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出身だからと言って情報交通の仕事はできませんよ」
成程、人の美点を見る人間はいるものだ、と今度はホアンが感心した。
だが見抜いた美点を容赦なく使い倒すのがニコニコ微笑を浮かべているこの政治家のやり口である。
「そうだろうねぇ、そういえば国民共和党内の話だが政調会のアキラ・エドー君も最近は忙しく走り回っていると噂だよ」
今は下院の情報交通委員長を務めている、情報交通委員会の次長まで務め出馬、議員としては3期目で60代後半と年齢も経験も【妥当】ではあるが……
ふう、と溜息をつき、ビョークルンドはジャムを食べた。茶はもうないはずなのだが――。
「官僚出身ではないですか。確かにやり手でしょうがこの時期に据えるには印象が悪すぎますよ」
年若い進歩主義政治家がエリート官僚上がり切り捨てたのを聞いてホアンは内心では加点した。インテリの中には過剰な実務家信仰者がいる。確かに実務家は必要であるが過ぎれば病気になる。
だがジャムをもしゃもしゃと食べていると健康面では激しく減点である、というか少女にすら見える小柄な体のどこに入っているのだろうか。
「なるほど、君の意見は参考になるよ」
ホアンがニコリと笑ったのを見てビョークルンドは眉を潜めた。いつの間にか自分が目の前の百戦錬磨の狸政治家の餌に釣り上げられたことに気が付いたのだ。
「もし仮に、の話だが今のところは経済開発委員会のウィンザー副委員長が本命だそうだ」
「ほうほう、なるほど――確かに発信力は高いですが、副委員長ならいいででしょうが。最高評議会の席に座るのですよ?」
彼女は口の回り方は軽快にすぎますよ、と総裁の言葉はそれなりに的を得ている。
彼女は保守系社会学者であり、マスメディアのご意見番として上がりとして良くも悪くもその舌鋒の軽快さで知名度を勝ち取ってきた。だが政治家としての立ち回りも【軽快】に過ぎる節がある。
愚鈍では話にならないのだが機に臨み変に応ずる事はマスメディアの解説委員としてはともかく、必ずしも政治家として褒められるわけではない。
そして何より問題なのは彼女はバーラト共和国の選挙区出身で直接中央政界に進出してきた事だ。
国民共和党が得意とする連立策略や地方政界との連携した上院(同盟弁務官総会)の操縦は地方議会出身者の党幹部達のノウハウによるところが大きい。だが近年は話題性と知名度の高く、地方議会の経験がない若手候補が台頭している――それにより与党第一党を維持し続けていてもその弊害は無視できない。
故に最高評議会の一員ではなく他党党首の顔でホアンは返事をした。
「だから人気がある奴が良い、という事なのだろう」
年若き進歩主義者は最後に残してた果肉をゆっくりと持ち上げた。
「‥‥‥ふむ。そして次の選挙に備える、
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