暁 〜小説投稿サイト〜
同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
復興の国〜エル・ファシル共和国にて〜(上)
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ましいですが――。自由党が公共事業の縮小路線に舵を切るのであれば我々が支持を続ける事は難しい。これはリベラル派と呼ばれる側であっても変わりません」
 労農連帯派であればなおさらだ、と鋭い視線が飛ぶがホアンは笑って受け流す。

「分かっているとも、だがある程度の軍縮は民生の維持に必要不可欠だ」
 兵士に給与を切り下げるわけではありませんよね、とビョークルンドが小首をかしげるが、ホアンは流石にそれはできんよ、と苦笑する。

「ただ譲れない条件として、国立大学と労働保険の国費負担を維持してください。中小企業の後継者不足が続いているのにこれ以上、中央の都市と開拓途上のまま百年もたっている地域を同列に扱うリバタリアンに食い荒らされては困ります」
 中央の良識的知識人と同じ側に立っている筈のエル・ファシル人がこやかに毒を吐く姿にホアンは頬を引き攣らせた。ホアンに見れば自由党が悪いわけではない。軍事費の増大が直接的な原因であるのだが――実際に提案して支持を集っているのだから仕方ないのだ。

「努力しよう」
 ホアンが愛想よく答える。

「う〜ん、努力は実らなければ意味がありませんよ?」
 ”エル・ファシルの進歩主義者”はニコニコと笑いながらジャムを口に放りこんだ。
「ハハハハハハッ」「フフフフフッ」
 二人の朗らかな笑い声が総裁執務室に響く。
 レベロやサンフォードの筋にも同じことを言って天秤にかけてるんだろう、とは言わない。

「約束を果たすのが政治家の務めであるが。その手段が問題だ、政策を実現するには数が常に求められる。‥‥君のところから下院議員を出さないかね」
 旗幟を鮮明にしろ、ということである。

 だがエル・ファシルの第二党の総裁は紅茶をゆっくりと楽しみながら表情を崩さない。
「――選挙が近いとはいえ、急な話ですね。エル・ファシルで貴方の党が注目されるネタはないかと思いますが」

「どうだろうね。例のアスターテの件に続いて今度はルンビーニ事故の報道は知っているだろう?最近は色々と面倒なことが多くてね」
 
 紅茶を飲み干し、ジャムにスプーンで丁寧に掬いながら総裁は答える。
「あの会社の入札が怪しいのは聞いていますが、まさか統合作戦本部長と同時に情報交通委員長の首を挿げ替えて、選挙の争点を作るつもりですか?」

「ノー・コメントだ」

「ふむん、であれば、こちらもノーコメントです。先が分からないわけですから」

 そうかね、とホアンはわざとらしく紅茶を啜った。ジャムが妙に多い気がする。
「それは残念だ。そういえばウィリアム・オーデッツ君が最近、党役員と話しているらしい」

「御冗談でしょう、彼は政治の素人な上に今いるのは安全保障委員会でしょう?国務畑に移ればいい仕事をするでしょうが、マスコミ
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