暁 〜小説投稿サイト〜
同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
復興の国〜エル・ファシル共和国にて〜(上)
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ながら笑っているがその目は鋭くこちらを観察している。
 
 中に入ると若々しく中性的な顔立ちの政治家がにこやかに出迎えた。協同改革党を率いていたベルティ・ビョークルンドである。

「お待ちしておりました、ホアン委員長閣下。ご無沙汰しており申し訳ございません」
 ホワンもにこやかに握手を交わす。
「いやいや閣下はよしてくれ、内務長官、いやここでは総裁と呼ぶべきかな。君がよく仕事をこなしているのは私も聞いているとも、実にたいしたものだ」

 中央から見ればトリューニヒト旋風を逆に利用して成り上がった政局家であるが地元を見て回ると中道のカリスマとして見られている。
 内務長官のポストを第一党が譲るのも異例だ。国家行政機関の管理、地方行財政、そして治安政策(共和国警察の指揮と自治体警察の監督)を担当している内治の要である。

「ここは進歩連盟の本部ですよ、委員長。総裁でお願いします」

 秘書が紅茶とジャムを盛り付けた皿を机に置いた。紅茶の香気がふわり、と立ち上る。良い茶葉を使っている。
 
「そうかい、それで彼女は?」
 すました顔をしているが、彼女の身のこなしは陸戦を学んだ精鋭部隊のそれに似ている。

「同盟捜査局に出向していた捜査官を勧誘しました。どうも最近は物騒ですからね」
 どうも右派団体が中央から金でも流れているようで極右団体が元気なのですよ、とため息をついた。

「‥‥なるほど」
 謀略を仕掛ける人間ではないのは確かであろうが耳を広げる事に良心の呵責はないようだ。そして極右派に酷く恨まれていることも自覚している。
 紅茶の香りを楽しみながらジャムを少しだけ口に入れる。少し気分が明るくなってきた。どんな偉大な人間だろうと、人間の精神というものは糖分一つで左右されるものである。

「そこまで天下国家に興味があるのであれば、ハイネセンポリスに出るつもりはないかね?」

 辞退させていただきますよ、とビョークルンド総裁はジャムにスプーンを突き刺し、口に放り込んだ。
「私の得意分野は基本的にエル・ファシルの地域社会支援や治安行政です。下院の党派に属すると私の強みは消えますし、上院に出張る程に軍務や中央が仕切るインフラなどの話が得意なわけではない。その手の仕事は私以上にコネクションも知識もある人がいらっしゃいます。私の役目はこの新党を育てることと予算を引っ張ってくる同盟議員の支援です」
 なるほど、とホアンは頷いた。長く友好的中立であった左派政党をまとめ上げた代わりに中央のどの政党にも籍を置くつもりはないということだ。

「最初にはっきりさせておくべきでしょうが、進歩連盟としては自由党と労農連帯党の双方が候補の統一していただけるのであれば間違いなく支持します。進歩連盟としては連帯労農党と自由党の連立が望
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