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戦国異伝供書
第百三話 緑から白へその十三

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「到底」
「そうなのか」
「ですから」
「当家もか」
「流石に東国まではと思いますが」
 それでもというのだ。
「まことにです」
「巨大な星か」
「左様であります」
「そうなのじゃな」
「ですから」
 それでというのだ。
「伊豆千代様にもお話しました」
「その星のことをか」
「はい、詳しく」
「そうであるか」
「今天下は多くの星が出ていますが」
「その星の中でもか」
「尾張の星はです」
 特にというのだ。
「恐ろしいです」
「そうなのか」
「ですからご注意を」
「そうしていくべきじゃな」
「伊豆千代様の代は」
「ではお主に頼めるか」
 氏綱は幻庵のその言葉を受けて彼に言った。
「あの者の代になってな」
「支えにですな」
「あの者のそれになってくれるか」
「拙僧でよければ」
 幻庵は兄にこう返した。
「兄上の言われるままに」
「ではな」
「その様にさせて頂きます」
「うむ、では伊豆千代が元服すれば」
 氏綱はその時のことも話した。
「その時の名はな」
「それは一つしかありませぬな」
「新九郎じゃ」
 この名だというのだ。
「やはりな」
「左様ですな、北条家の主となられる方ですから」
「だからじゃ」 
 それ所にというのだ。
「あの者の名は新九郎にするぞ」
「では諱は」
「それはどうやらな」
 こちらの名はというと。
「氏康となりそうじゃ」
「そうですか」
「うむ、そうなる」
「ですか、では」
「元服した時はその名になる」
 こう言ってであった、氏綱は伊豆千代の元服を待った。そしてその元服した時に伊豆千代は新九郎という名になり。
 諱は氏康となった、その名になった彼に氏綱は話した。
「これからはな」
「はい、元服したからには」
「うむ、政にな」
「戦にな」
「出てもらうからな」
「わかり申した」
「何かと働いてもらうぞ」
 氏綱にこうも言った。
「よいな」
「それでは」
 こうしてだった、氏康は元服してすぐに家のことに入った。これが相模の獅子のはじまりであった。


第百三話   完


                2020・6・23
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