第二章「クルセイド編」
第十六話「黒と金」
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自分にも言い聞かせるようにリオンはシャルティエの柄を握り締めた。
…同時に自分はなんと無力だろうと思った。たかが足の二本が調子が悪いくらいでここまで消極的になるのか。そんなリオンの心の内を代弁するようにその声は響いた。
「本当にそうかな?」
「なっ!?」
リオンには声ではなく銃声のほうが響いたが。
車椅子に乗りながら圧倒的な反応速度で空中の魔力弾を叩き落した。
「………今のは。」
「車椅子でよく反応するじゃねえの。」
ライフルを担いだ男が茂みの奥から現れた。
直接見るのは初めてだったがリオンはその顔を良く知っていた。
「エレギオ・ツァーライト…何のつもりだ?」
男…エレギオはケラケラと笑った。
「さあて何のつもりだろうな?」
「答えろ!貴様は何を考えている!」
「さあてな…こういうこと考えてんのかもなぁ!」
さっきよりも更に速く銃口が火を噴いた。
「ラピッドファイア!」
音速を超える魔力弾が放たれる。剣で防ぐのは不可能と判断したリオンはシャルティエを構えた。
「シャル!」
「了解です!」
「「アースビット!」」
咄嗟の晶術で土色の球体を作り出しなんとか魔力弾を防御する。エレギオは「やるねえ」と口笛を吹いた。本来なら決定的な隙、リオンは逃すまいと電光石火の速度で打ちかかるだろう。
だが忘れる無かれ、リオンは今車椅子に乗らなければならないほどの怪我人だ。初日に無理やり歩きはしたがあんなよれよれでは老人にだって劣る。さらに悪いことにエレギオの放った弾丸は車椅子の車輪を打ち抜いていた。これではもうリオンは一歩の距離も移動することはできない。
「クソッ……………何か手は無いか?」
「貰ったぁ!」
既に銃の先の魔力刃がリオンの目の先に来ていた。
「させるかっ!」
この距離なら座りながら振る剣でも奴に届く!
そう判断してリオンは水平にシャルティエを振り抜いた。だが足が使えないのに剣技も糞も無い。
剣は無情に空を切ってエレギオは今度こそ勝利を確信した顔になった。銃剣の切っ先が無防備なリオンに再び襲い掛かる。
(ここまでか…!)
「ここまでか、とか思ってねえだろうな?」
銃剣は目と鼻の先から、動かない。
「な…にを。」
「クソッタレが。俺はお前みたいのが大嫌いなんだ。」
銃剣が一閃する。リオンは防ぐ事もできずただただ激痛に呻いた。
……それでも血は一滴も零れなかった。
「ひ…非殺傷設定だと…?」
凄まじい異物感にむせながらリオンはそう尋ねた。先ほどまでの顔とは打って変わってエレギオは無表情だったーだがリオンには今のエレギオの方が怖い。恐ろしい冷酷さと静かな怒りを共存させる目。
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