七話 短剣使いとの決闘
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た。
「ロン!気を抜くんじゃない!」
《聖竜連合》のシュミットだ、勝利を目前とした状況で何を――と皆が怪訝に思う中、ある事に気づいたロンの表情が凍る。この決闘の勝利条件の一つたる強攻撃のヒット、それを見舞おうと狙っていたシュウの目は変わらず、ロンの姿を捉えていたのだ。それも焦りなどまるで無い、透徹とした色のままで。
その迷いない目つきが掻き立てる不安を振り切って、ロンがソードスキルを発動しようとしたときはじめて、彼は視界の端でいつの間にか輝きを放ち始めていたそれの存在に気づいた。振り抜いた筈のランスを握るシュウの手は突きを放つにはやや不向きな、柄に対し完全な垂直に握りこまれているそれがスチールグレーのライトエフェクトを発生させながら電光石火の勢いで自身に飛び込んでくるのにロンはまともな反応を見せることも出来なかった。
「ぐ……おっ!」
ランスの柄尻を鳩尾に叩き込まれ呻くロン。突撃槍用打撃技《シュタイン・ファウスト》。低威力だが発動から技の出が速く硬直時間も短い、ランス使いにとって近接での緊急回避に用いられるソードスキルだった。
同じランスの使い手としてその技の存在を知っていたからこそシュミットは警告を発したのだろう。それ以前に筋力型プレイヤーの攻撃を弾くのが容易過ぎたことにロンは気づくべきだったのかもしれない。迎撃にソードスキルを用いなかったこと、そして即座に発動したカウンター。シュウが初めからロンを懐に迎え入れるつもりだったことは明らかだった。
「ちぃ!?」
ダメージ判定の弱い柄での攻撃であったため、強攻撃というまでの威力には至らず決着は着いていない。SAOでは槍で突かれたとて痛みが発生することはないが、衝撃が体を突き抜けていく擬似的な感覚は慣れるものではなく、たたらを踏みながら数歩下がったロンの眼前に、シュウがランスの穂先を突きつけた。
ヒュ、と。ロンが吸い込んだ息を詰まらせる。円錐形のランスの切っ先、それが文字通りの目と鼻の先に突きつけられることによるプレッシャーは並大抵のものではなかった。触れるだけで穴をあけられそうな尖端が自分に間近でつきつけられている、本能的な恐怖もあいまりその瞬間、彼の視線がその一点に吸い込まれる。
シュウがランスを突き込むなり、引き寄せるなりしたならばロンはなんらかのリアクションを起こせたかもしれない。しかし彼がしたことは穂先を突きつける、それだけの行為だった。視線の集中に現実同様、SAOという世界の中においてはより明確に、視線を凝らした対象にのみリアルなディテールを与える《ディテール・フォーカシング・システム》により今ロンの視界の中では向けられた穂先以外がぼやけてすら見えるはずだ。
「がっ!」
そんな状態では続く攻撃、大振りでシュウが繰り出し
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