第91話『恋人』
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間が生まれる。
繋いだ手から伝わる結月の体温が、いつもより高く感じるのは気のせいだろうか。
「……ハルト、この後ってどうしたらいいの?」
「え!? いや、俺もわかんない……」
恋愛経験が無いため、手を繋いだりキス以外に恋人がするようなことがわからない。
マンガでも『付き合ってハッピーエンド』という展開が多く、その先は晴登にとって未知の世界なのだ。
だから、今できることは1つ──
「と、とりあえずこのまま帰ろうか」
「そ、そうだね」
ささやかなドキドキを享受することにした。
*
「「ただいま」」
「あ、お帰り、お兄ちゃん、結月お姉ちゃん!」
家に着くと、智乃が出迎えてくれた。
久しぶりの再会が嬉しいのか、いつも以上に元気いっぱいな笑顔を浮かべている。
「……あれ、なんか雰囲気変わった?」
「「えっ!?」」
しかし一転、訝しげな表情になる。
まさか、付き合い始めたことに気づいたとかじゃないだろうな。ドアを開ける前に手は離したし、気づかれる要素はないはずなのだが──
「なんか2人とも、いつもより距離が近い気がする……」
「そ、そんなことないぞ!」
「うんうん、こんな感じだったよ!」
「う〜ん、なんか怪し〜」
智乃の疑いの目は消えない。女の勘、とかいうやつだろうか。侮れない。
……別に隠す必要はないのかもしれないが、今日散々いじられたのだ。そんな展開はもう勘弁なのである。
「ま、いいや。夕食になったら呼ぶから、それまで休んでていいよ」
「ありがとう、助かるよ智乃」
「えっへん。私はできる妹なんだから」
智乃が小さな胸を張ってドヤ顔した後、2階に上がっていくのを見て、晴登と結月は大きく息を吐いた。
「な、なんかドキドキするね……」
「隠れて付き合うって、こんな気分なのかな……」
よくわからない感情を共有したところで、晴登たちも2階へ上がるのだった。
*
夕食を終え、部屋に戻って夏休みの宿題をしている時、彼女は訪れてきた。
「ねぇハルト、一緒にお風呂入らない?」
「……は?」
ドアの所に立ったまま、恥ずかしそうに訊いてくる結月。あまりに突飛な話に、晴登は驚きを隠し切れない。
「だから、お風呂」
「いや聞こえてるけど……何で?」
「せっかく恋人同士になったんだから、風呂ぐらい一緒に入るものかなって」
「え、そうなの!?」
結月の意見に、晴登は半信半疑で問い返す。ただのカップルで、そこまでするものなのだろうか。
しかし、既に同棲している時点でただのカップル
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