第六十五話 ヒューロー湖畔の戦い・前編
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「撃て撃て〜っ!」
パパパパン、と銃声が鳴る。
傷だらけの獣が血塗れで倒れるが、別の獣が新たに現れ、戦線を押し上げる。押される形で武偵隊が後退する……
このサイクルを武偵隊は、何百回と繰り返していた。
現在、アニエスら武偵隊は、ヌーベルトリステイン軍の待ち構える陣地に、敵の軍勢を誘引する任務を受けていた。
「被害は?」
「負傷者は3名、死者は居ません。被害は軽微です」
「ここまでは順調か……敵の追撃をかわす。直ちに移動を」
「了解」
デヴィットは、武偵隊の隊員に命令すると、物資運搬用の馬車に飛び乗った。
その頃、アニエスは殿として戦っていた。
貴重な弾薬を節約する為、G3アサルトライフルを使わずに、トリステイン製の後装ライフルで戦っていた。
「分かっていたけど、撃っても撃ってもキリが無い」
と、辟易しながらトリガーを引いた。
敵は俊敏なコヨーテの集団で、弾幕を絶えず張っておかないと、あっという間に距離を詰められる危険があった。
「おい、アニエス後退命令だ! 乗れ!」
ヒューゴが、馬車に備え付けられた新兵器のガトリング砲のハンドルを回しながら、アニエスに後退を伝えた。
「後退……了解です!」
ヒューゴに応えたアニエスは、ガトリング砲の付いた馬車に飛び乗った。
「御者に着く。アニエス変わってくれ」
「分かりました」
ヒューゴから変わったアニエスは、ガトリング砲のハンドルを回し、追いすがる獣の達を撃ち払った。
全ての武偵隊隊員が馬車に乗り込むと、一斉に馬車が動き出し後退を始めた。
ガトリング砲付きの馬車は、武偵隊だけで五台配備されていて、効果的な弾幕を張りながら後退する事ができた。
☆ ☆ ☆
早朝、ヌーベルトリステイン軍の陣地には、湖畔の近くという事もあってか、乳白色の濃い濃霧が漂っていた。
陣地の所々では、兵士達が茹でたジャガイモと缶詰で食事を取っていた。
「おはようございます、将軍」
「おはよう、早速だが敵の状況はどうなっているだろう?」
「武偵隊の誘引は成功しています。早くても今日の昼には接触します」
「分かった。それまで準備を怠らないように、各部署に通達を」
「了解」
兵士がテントから出ると強めの風が吹き、濃霧を何処かへと吹き飛ばした。
「あっ!」
先ほどの兵士が大声を上げると、何事かとウルグがテントから出てきた。
「何があった?」
「あ、あれを!」
雪化粧した山々の向こう側に、距離の
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