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戦国異伝供書
第百三話 緑から白へその四
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「まさにな」
「領地にしたいと思っておられます」
「そうじゃ、そして甲斐の武田家もな」
 この家もというのだ。
「甲斐からじゃ」
「関東に進出することも考えられまする」
「この両家は関東にないからな」
「当家としては戦うつもりはありませぬ」
「しかしじゃ」
 それでもというのだ。
「関東に来られては困る」
「だから用心が必要です」
「お主もわかっておるな」
 早雲は我が子の返事に会心の笑みを以て応えた、その笑みには我が子の成長を心から喜ぶ父の心もあった。
「よいことじゃ」
「そう言って頂けますか」
「左様、今川家と武田家とは和し」
「そして時として戦う」
「そうして関東には入れぬ」
「そうすることが肝心であり」
「我等の敵は今は両上杉を第一とし」
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「古河公方にも用心し」
「ことを進めていくのじゃ」
「それでは」
「そして伊豆千代の代にな」
 また赤子を見て言う。
「両上杉を完全に敗れる」
「その様にする様にしましょうぞ」
「我等はな」
「ではそれがしは伊豆千代の教育も」
「宜しく頼むぞ」
「わかり申した」
 氏綱は父の言葉に頷いた、そうしてだった。
 嫡男である彼の養育にもあたった、早雲は伊豆千代が四歳の時に亡くなったが彼はその時からもすくすくと大きくなり。
 日に日に立派な顔になった、氏綱はその彼を見て弟である北条幻庵に話した。
「よいな」
「はい、先はですな」
「伊豆千代は大器になる」
「何事もよくわかっておられ」
「様々なことを経験してな」
「そこから学ばれています」
「そうして日に日に大きくなっていて」
 そしてというのだ。
「世も知る様になっておる、しかも勇の心もじゃ」
「強く持っておられます」
「強い稽古の相手にも背を向けぬ」
「そのこともよいですな」
「しかも退くことも大事だと教えればな」
 その時はというと。
「しかとじゃ」
「以後その時を見て強い相手と向かってもしっかりと退かれます」
「相手に背を向けずな」
「そこもお見事です」
「父上も言われたが」
 早雲、彼がだ。
「あの者は間違いなくな」
「大器になられ」
「両上杉もじゃ」
 両家もというのだ。
「倒してくれる、父上がご覧になられた夢じゃが」
「鼠が二本の大木を齧って倒して」
「鼠は虎になる」
「そうした夢ですな」
「うむ」 
 まさにというのだ。
「そしてそれは伊豆千代がな」
「してくれますか」
「両上杉は我等が押しておる」
「両家はまだ強いですが」
「それでもな、そして古河公方は今は日和っておるが」
 北条家についたり両上杉についたりというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「敵になればな
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